申請者はこの5年間にわたって、大隈重信の文化的活動を、政治活動との関連を視野に入れながら、研究を進めてきた。この5年間に形にしえた代表的な成果としては、『大隈重信―民意と統治の相克―』(中央公論新社、2017年)が挙げられるが、それ以外にも多くの論文や研究報告・講演などを行い、研究を進めることはもちろん、その社会への還元を行うことができたと考える。とりわけ、第二次大隈内閣期に見られる「大隈人気」の背景として、「文明運動」と呼ばれる大隈の文化的な活動が果たした役割を克明に明らかにし、さらにその文化的な活動の内実や、大隈没年に至るまでの文明思想の変化を明らかにしえたことは大きな成果であったと考える。2018年度に関しては、これまでの成果のとりまとめの作業を行うとともに、大隈の政党認識と関連する国際学会報告、大隈に関連する講演、また図書の分担執筆などの成果を発表することができた。またこれ以外に論文化の準備をしているテーマも複数存在する。また、今後、この研究の延長線上に行っていく予定の研究活動への準備の作業も行うことができた。具体的には、大隈の文明運動を研究するうえでこれ以上ない重要資料ともいうべき、市島春城関係史料の解読・分析・出版に向けた活動である。本年度までの成果をもとに、今後、市島資料をさらに分析していくことで、本研究の成果を有効活用し、さらなる成果の発表のための足掛かりとしていきたいと考える。
|