本研究課題「横浜正金銀行ニューヨーク支店の研究」は、横浜正金銀行ニューヨーク支店(出張所)の開設と初期の活動、支店勤務者の変遷等を多角的に明らかにした。とりわけアメリカ国立公文書館所蔵の横浜正金銀行ニューヨーク支店資料の中から、明治13年から明治22年までの「本店通信」や明治14年から明治18年までのニューヨーク出張所半季実際考課状、行員の変遷などを、はじめて研究成果報告書に翻刻掲載することができた。 「本店通信」は、横浜正金銀行の為替部門を担当する「為換方」や「外国為換部」からニューヨーク出張員にあてた公式書類である。2枚重ねた便箋に書くことにより正副二通を作成するコピーレターで、書類番号、記載年月日、搭載した郵船便の名前、さらには宛先と差出が記載されている。これらの付近には行員の印鑑が押され、銀行内で書類が回覧され内容確認が済んだことを意味する。外国為換部に配属された行員だけでなく、頭取や取締役、本店支配人の印も押されており、銀行幹部の方針や指示内容を把握することができる重要資料である。 「半季実際考課状」は、正金銀行の半年ごとの事業報告書のことで年2回の株主総会時に株主に報告されるものであるが、支店においても作成されていた。ニューヨーク出張所では、明治13年9月頃にニューヨークに出張員が到着してから、翌14年度6月までの分から半季実際考課状が作成された。ニューヨーク出張所では第1回から第10回までの半季実際考課状が残されており、5ヶ年分の同出張所の活動状況を把握できると同時に、出張所経費などの詳細も把握できる重要資料である。 またニューヨーク支店の支配人の沿革や勤務者についても、横浜正金銀行の行員記録などにより、ニューヨーク支店支配人については全部を、支店勤務の行員については大正7年以降の全貌を把握することができた。
|