研究課題/領域番号 |
26370813
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研究機関 | 山梨県立博物館 |
研究代表者 |
西川 広平 山梨県立博物館, 山梨県立博物館, 学芸員 (60574150)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 災害史 / 噴火 / 雪崩 / 富士山 / 宝永噴火 / 信仰 |
研究実績の概要 |
本研究は、前近代における自然災害の発生とそれへの対応に関して、当時の社会が災害をどのように記録化し、または伝承や信仰の中に災害の影響を反映してきたのかを、古代・中世から近世にかけて甲斐国で発生した噴火・土石流災害、水害を中心に考察することを目的とする。 これまで、特に富士山の噴火や山麓の土石流災害を対象に研究を進めてきたが、平成28年度は、埼玉県・千葉県下の自治体史に収録されている富士山宝永噴火関係の古文書・古記録の内容を確認し、データ入力する作業を実施した。この内、埼玉県分を終了することができた。 また、平成28年度には、16世紀における上野国(群馬県)赤城山への富士山の祭神である浅間神の勧請について、噴火災害をきっかけとした信仰の拡大と捉えた先行研究による仮説の検証を、これまでの調査データをもとに行った。この結果、富士浅間神の赤城山への勧請においては噴火災害の影響を直接確認することができず、むしろ当時の戦国大名間の政治的な動向が関係していることを明らかにした。この成果は、『山梨県立博物館研究紀要』第11集に「戦国期上野国赤城山における富士浅間神の勧請について」と題した論文にまとめて、発表した。 平成29年度は、これまでの調査成果をまとめるとともに、全国各地の大名家等に宝永噴火の災害状況に関する情報がどのように伝えられたのかを実物資料の調査も踏まえて考察し、報告書の刊行に向けた作業を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、当初予定していた調査項目の内、自治体史からのデータ抽出作業が進むとともに、これまでの調査データを踏まえた研究発表を行うことができた。この一方、実物資料の調査の一部が日程上の都合により調整が付かなかったため、この分は平成29年度の調査と一括して実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
千葉県香取市の伊能忠敬記念館に収蔵されている宝永噴火関係資料や、宮崎県立図書館に収蔵されている旗本伊東氏作成の宝永噴火の記録を調査・撮影し、これらを含めて宝永噴火に関する災害記録を一括して整理し、データ化を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、自治体史からの調査データの抽出作業・複写作業とそのデータ整理、またこれまでの調査データを活用した研究発表が中心となり、それに係る経費を執行した。機材の購入は次年度の作業に関わるため、より品質の良い製品の販売を待って購入することとし、必要となる経費を繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、調査・研究の進展と総括に合わせて、機材の購入や旅費・人件費をともなう調査の実施、また報告書の印刷・製本を行い、経費の支出を執行できるよう対応する。
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