研究課題/領域番号 |
26370816
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
荷見 守義 弘前大学, 人文学部, 教授 (00333708)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 明実録 / 明朝档案 / 巡按山東監察御史 / 于応昌 |
研究実績の概要 |
『明実録』は明代史研究の最もスタンダードな史料である。これに対して「明朝档案」は個々的な政策についての上奏文であり、謂わば『明実録』が鳥の目であれば、「明朝档案」は蟻の目である。また、『明実録』は編纂史料であり、一日に膨大な数の案件が上奏・裁可されていく中の僅かに数件を記録として留めているのであり、この点において、個々の「明朝档案」の内容を『明実録』に見出すことは難しいのである。ただ、『明実録』の記述方法に関しての問題はそれに留まらない。本件の課題である明朝軍人の功罪についての処分記事を検討していくと、『明実録』では皇帝からの指示として、当該案件についての措置内容を巡按監察御史に検討させて報告するよう求める内容が多い。しかし、「明朝档案」を見てみると、リアルタイムで諸方からの情報を収集した上で、処分案を定めて上奏しているものがある。档案97-4遼東都司経歴司為官軍斬獲犯辺達子首級等事給巡按山東監察御史的呈文 万暦九年三月初十日(221 遼東都司経歴司為虜賊犯辺官軍斬獲首級等事給巡按山東監察御史的呈文 万暦九年三月初十日)はそのような档案の一つである。拙稿「実録と档案の間‐明代万暦初期の事例から‐」を『中央大学人文科学研究所 人文研紀要』82では本档案についての解析において、『明実録』の記述方式と「明朝档案」から見える風景にはかなり径庭があることを指摘した。その他、明朝軍官の犯罪記録についての収集を鋭意進めた一年であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
明朝軍官に関わる犯罪と処罰記録について、『明実録』「明朝档案」のほか、各種文集の奏疏記事にまで手を広げて、収集を続けた。なお、調査対象である文集奏疏が膨大であって、取組を進めている点では順調であるものの、全体の見通しがつくところまで達成されていない点では予定より進んでいるとは言えない。並行して分析に力を入れて行きたいところである。
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今後の研究の推進方策 |
新年度においては論文3本、リブレット1冊の刊行を予定しており、本件に関わる分析については予定通りの進捗が期待されるが、一方で史料収集を急いで全体の目処を立てて行きたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた重要史料の刊行と中国からの輸入にタイムラグが生じたため、次年度への繰越金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度において、必要史料の計画的な購入に充てていく予定である。
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