本研究では、シリア北東部のテル・タバン遺跡において2005~2010年に日本隊が実施した発掘調査(隊長:沼本宏俊[国士舘大学])によって出土した紀元前2千年紀後半楔形文字文書とその歴史的背景に関する基礎研究を行なった。文書は、テル・タバン遺跡にあったタベトゥ市とその周辺に栄えた地方王国マリ国において作成されたのだが、本研究は、このマリ国とその宗主国であったアッシリアの歴史学的諸問題に関する個別課題の研究に取り組んだ。それにより、マリ国の特殊な状況の諸相を明らかにするとともに、アッシリア領土統治の多様性に光を当てた。研究の成果は、欧米の楔形文字学の主要な査読誌などにおいて論文として公刊した。
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