研究課題/領域番号 |
26370820
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
菅原 純 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 研究員 (30420285)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カーディ / 契約文書 / チャガタイ語 / カシュガル / ホータン / 新疆大学 / 合璧 / ウイグル |
研究実績の概要 |
当該研究課題の第2年度である今年度は、①前年度新疆大学に移管がかなった収集文書コレクションの目録編纂、②コレクション文書史料に依拠した書誌ならびに歴史研究、③収集コレクション公開へ向けたオンライン上の資料体の構築、の3点につき活動を実施した。 ①目録編纂については、日本において作業を継続するとともに、8月から9月にかけて収集文書の移管先である新疆大学民族文献研究基地を訪問し、収集文書現物を確認しながらのデータ整理作業を行った。あわせて同基地担当者と目録の内容、成果公開の手法、収集文書を利用した研究課題企画につき協議を行った。 ②書誌、歴史研究については、20世紀初頭にカーシュガル所在のスウェーデン伝道団印刷所で3次にわたり刊行された文書書式集につき重点的に検討をおこなった(当該研究の成果は2016年度暮れオランダのBrill社から刊行予定の英文論集Beller-Hann et al.(eds) Kashgar Revisitedに収録・刊行の予定である)。さらに萌芽的な研究として中華人民共和国初期(1950年代)の政府による農村調査の成果報告と収集文書の対象研究にも着手し、その初期的な成果は東京外国語大学海外事情研究所の公開研究会(2016年2月17日)にて「彼らはウンマをどう解読したか―『新中国』の新疆農村調査(1950-1)をめぐって―」と題し口頭報告した。 ③オンライン資料体の構築については、全画像データとローカルPCで構築されていたデータベースとの統合作業を行った。こちらは技術的な課題(表示の簡素化、参照許可機能の付加など)を克服する必要が新たに生じ、これら諸点を解決ののち公開の予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新疆大学に移管した収集文書の物理的整理作業については、連携機関である新疆大学新疆民族文献研究基地により作業が進められ、コレクション専用のキャビネットに収納され、実際に学内研究者・学生の利用に供されていることを確認した。他方学術的な同コレクションの目録作成作業については、新疆大学において実文書との対照のもと日本語による基本的なデータ項目の入力は終了し、一部データについてはそのデータの英語化に着手している。
文書史料を利用しての書誌・歴史研究は前年度の包括的・概説的な取り組みから個別具体的な研究へと重点を移し、書式集研究、債務契約に関する研究、さらには1950年代の農村調査データの見直しなどにつき検討を行い、そのいくつかについては前項の通り英語論文や口頭報告の形で一定の成果をおさめた。
上述の通り、当該年度の研究活動はおおむね順調に推移していたと結論できる。しかしその一方で、成果公開のタスクにおいて「オンライン資料体」の公開は、技術的な問題により依然未公開である。また年度内に東京ならびに新疆大学で予定していた「文書史料研究セミナー」も、主要出席予定者のスケジュール調整の都合上次年度に持ち越さざるを得なかった(当セミナーは、東京では2016年6月4日に東洋文庫を会場に開催の運びである。新疆大学での開催はなお調整中である)。これら諸点については次年度の課題とする。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(2016年度)で当該研究課題は折り返し、後半の3年目を迎える。幸い上述の通り研究活動はおおむね順調に推移しており、研究期間内に「新疆イスラーム法廷文書」コレクションの資料体を構築・公開し、当該史料の効率的な利用環境を整備するという当初の目標は高い確度で達成されつつある。今後の方策としては、大枠では、次年度に「新疆イスラーム法廷文書」資料体のオンライン上での運営(公開)を開始し、最終年度中にその恒久的な運営体制を整備することとしたい。そのため、次年度は具体的に以下の3点につき活動を展開していく。 ①「新疆イスラーム法廷文書」資料体の公開。技術的な課題を克服し、当該史料を広範囲の研究者が参照利用できる資料体サイトをインターネット上に開設公開する。 ②個別研究の深化。前年度に取り組んだ書式集研究、債務契約、1950年代の農村調査データの各テーマに関する研究を論文の形で発表する。さらに新たにワクフ契約に関する研究に着手、深化を図る。 ③文書史料研究セミナー(仮称)を東京(東洋文庫、2016年6月4日を予定)ならびに新疆大学(9月を予定、調整中)で開催し、文書史料研究の成果還元ならびに若手研究者の育成を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
東京で新疆文書史料研究セミナーを開催の予定であったが、上述の通り参加予定者のスケジュール調整がつかず2016年度に延期となったため、国内出張旅費分の予算額が次年度への繰り越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越し分は2016年6月4日に延期実施となったセミナーの参加者招聘旅費として執行される予定である。
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