研究課題
当初3月に予定していたラージャスターン南部の城砦調査がインド側の事情で平成28年度に延期されたため、本年度は主に城砦データの収集・整理と都市に関する論文作成に重点を置いて研究を進めた。刻文史料にはときどきdurga, gadha, kottaといった城砦を示すタームが現れる。これらのタームを刻文史料から探ることで、いつ、どの都市に城砦が存在したか、またその都市の周辺地形から平地城砦か山上城砦かなど城砦タイプまで判明することがある。昨年度以来の推進方策として掲げていたように、本年度からこれらのタームを網羅的にピックアップして整理する作業を開始した。現在もこの作業は継続中であるが、現段階では当初期待していた城砦の創建年代については、なお多くの城砦に関して確定できていない。ただし興味深い事実として、12世紀の刻文史料には記されながらも現存しない城砦が存在すること(例えばNadolのdurga)、それが平地部の城砦であるらしいことなどが判明してきた。報告者は13世紀以前の城砦の特徴を大規模山上城砦と規定してきたが、このようなすでに消え去った平地城砦の存在をも考慮しなければならないことが、今後の大きな課題となった。また、論文「パンチャクラとマハージャナ――中世初期ラージャスターン・グジャラートの都市行政と集会組織」を作成し、城郭都市が一般化する以前である12・13世紀の共同体的な都市社会の在り方と王朝支配との関係を論じた。
3: やや遅れている
当初予定していたラージャスターン南部の城砦調査が次年度に延期されたことが大きな理由である。また城砦や都市城壁の建造年代の確定のため刻文史料の整理を行っているが、想定していたよりも年代確定が難しい。今後の史料収集に期待する。
・年代確定のために、今後刻文史料だけでなくサンスクリット語、ラージャスターニー語、ペルシア語の文献史料からも城砦に関する情報を収集し、建造年代調査をさらに進めていく。・ラージャスターン南部の城砦調査を実施する。・報告者が想定していなかった13世紀以前の平地城砦の位置づけを試みる。・中間的な研究報告を論文として作成する。
当初予定していたラージャスターン南部の城砦調査が次年度に延期されたため。
ラージャスターン南部城砦調査を実施する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
太田信宏編『前近代南アジア社会におけるまとまりとつながり』東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
巻: なし ページ: 未定
N. Karashima (ed.), Report on South Asian Epigrphical Studies carried out as A Toyo Bunko Project, Tokyo: The Toyo Bunko
Karashima Noboru, and Hirosue Masashi (eds.), State Formation and Social Integration in Pre-modern South and Southeast Asia: A Comparative Study of Asian Society, Tokyo: The Toyo Bunko
宮本久義・小西公大編著『インドを旅する55章』明石書店
水島司・加藤博・久保亨・島田竜登編『アジア経済史研究入門』名古屋大学出版会
巻: なし ページ: 91-103