研究実績の概要 |
本年度は以下の通り2回の実地調査を行った。とくに城砦の構造と立地状況、市街区を囲む残存城壁の構造・特質など、衛星画像や既存の報告書では確認できない諸点を中心に調査を進めた。 ・9月に行ったラージャスターン南部各地の城砦(Acalgarh, Candravati, Sirohi, Jalor, Siwanaなど)の調査では、とくにアーブー・パラマーラ朝の王都Candravatiとアーブー山の山上城砦Acalgarhの、互いに20kmも離れた二つの城郭が密接に関係していることが判明した(後者はいくつもの小さな郭から構成されており、平地王都の詰めの城として機能していたと考えられる)。今後、この城砦間の関係を刻文史料などに依拠してさらに詰めるとともに、他の城砦・城郭都市についても王朝統治や軍事・外交政策と関わらせて城砦間関係を考察する必要がある。 ・3月に行ったラージャスターン北東部各地の城砦(Nimrana, Alwar, Dausa, Kishangarhなど)の調査でも城砦構造に関していくつもの新たな知見を得た。とくに11世紀以降の創建と考えられているAlwar城は一見、大規模山上城砦であるが、一山の上部を囲う一般的形態の山上城砦ではなく、U字形の山の谷部分を取り囲 むように城壁をめぐらしており、主要な施設も谷底ではなく城壁に近いところに位置している。大規模山上城砦としては極めて特異であり、その位置づけは今後の研究の進展に期するところである。
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