研究課題/領域番号 |
26370827
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
長谷川 修一 立教大学, 文学部, 准教授 (70624609)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 北イスラエル / 列王記 / 旧約聖書 / アッシリア |
研究実績の概要 |
平成26年度は、基本文献の収集から着手した。計画通り、新アッシリアの王碑文の最新の校訂本、旧約聖書本文の研究書、関連諸遺跡の発掘報告書を収集した。国内では閲覧が困難な書籍については、計画通り、9月中にドイツのハイデルベルク大学神学部の図書館において文献資料調査を行うことによって補完した。 次に、収集した旧約聖書の諸写本・古代語訳間の比較を行った。北イスラエル王国史末期を描く『旧約聖書』「列王記」の記事のオリジナルに近いテキストの復元を目指すこの作業は7割を終了している。同時並行して、復元したテキストを、テキスト内の語彙や表現、そこにみられる思想などを手掛かりに三つの編集層に大別する作業も進めている。 この作業中、以下の知見が得られた。すなわち、『旧約聖書』の「列王記」に描かれているイエフ王の記事を参照して書かれたとされる「歴代誌」下の同王の記事について、テクストの詳細な分析から、歴代誌の筆者による情報改ざんとその背後にある歴史叙述の意図が明らかになったのである。この成果は査読付きの投稿論文で発表した。また、この内容にさらに改訂を加えたものを平成27年度中、海外の学会で発表する予定である。 これらに加えて、研究成果の一般への還元のため、とりわけ、本研究で用いる方法論について広く一般に周知するため、11月、上智大学キリスト教文化研究所において公開講演を行った。講演会にはおよそ60名ほどの一般の参加者があった。本講演は平成27年度中に論文としてまとめて出版することを予定している。 アッシリア王碑文の分析の成果は、12月に筑波大学において開催された国際シンポジウムにおいて発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象とする『旧約聖書』本文の編集層識別作業が、必要な書籍の出版が遅れたことによって若干遅れているが、他は順調であり、遅れは平成27年度中、十分に取り戻せるものと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
絶版あるいは入手困難なパレスチナ諸遺跡の発掘調査報告書の内容に関する情報収集のため、平成27年度夏季に、これらの資料が充実するイスラエル、テル・アヴィヴ大学考古学研究所図書館で資料調査を行う(1週間)。 アッシリア王碑文を中心とした同時代セム語文献資料の分析によるエジプトとアッシリアの政治情勢の再検討を行う。 北イスラエル王国の首都サマリアとそれ以外のパレスチナの遺跡の発掘調査結果を比較し、サマリア攻囲戦と陥落の特異性を解明する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に予定していた海外における学会発表の開催地が、当初予定していたヨーロッパではなく南米と決定されたため、平成26年度において旅費を節約して平成27年度分に充てることとした。また、英文論文の校正を友人が好意で無償で引き受けてくれたため、予定していた人件費を使用しなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は7月にアルゼンチンで行われる学会で本研究の成果を発表することが決定しており、平成26年度使用しなかった分の旅費もこちらに充当する予定である。平成26年度校正を無償で引き受けてくれた友人が平成27年度は多忙なため、また、英文での論文の投稿を複数検討しているため、英文校正費の出費が大きくなることが見込まれる。同様に平成27年度の分を充当することによって解決する予定である。
|