研究課題/領域番号 |
26370828
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
青木 敦 青山学院大学, 文学部, 教授 (90272492)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 宋代 / 法制 / 天聖令 |
研究実績の概要 |
前近代中国の行政の現場では、関連する法や先例、命令を参照する必要に常に迫られた。明・清各朝は、部局や地方が独自に、手元に置くべき先例・法律集として則例や省例を編纂した。しかし対照的に宋朝では、中央の側が、部局・地方・用務ごとに法典を立法した。『陝西編敕』『福建令』などである。これは、具体的行政課題は現場の判断に任せてきた中国法制史上、例外的な立法形態であることが知られているが、従来ほとんど未開拓であったため、本計画で、この宋代地方法典の世界を、可能な限り条文の復元に至るまで明らかにすべく、研究を進めた。部局・地方向けの特別法については、『宋会要輯稿』刑法「格敕」、『宋史』藝文志、『玉海』66などに、少なく見積もっても20の法典名があり、文集を含めた宋代史料全体を見渡せば、さらに多くの特別法の存在が確認できる。そこで本研究では、行政ランクを含めた法典の新たな門別分類法を暫定的に定めた。そして現存する全ての宋代判語から、ほぼすべての法律条文を復元し、現存の律や『慶元条法事類』と対応させ、当時の「生ける法」の復元を行った。またそこからは、唐宋変革論からは理解が難しい宋朝の「法律準拠主義」、その背景としての秩序形成が不安定なフロンティア江南を抱え込んだ特殊事情も、明らかになった。また、従来の研究に引き続き、『景徳農田敕』などを復元した。これらの結果を、単著『宋代民事法の世界』において公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
宋代の種類不明の法律を、当時の意識に沿って内容に基づき、律、敕、令のいずれともことなる門別の分類法を組み立てることができ、さらに単著にまとめるに至ったため、計画以上に進展していると評価できる。さらに広範な法律収集のための書籍購入等は次年度以降に持ち越される。
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今後の研究の推進方策 |
開元25年律令格式で完成に至った法体系からの不可避の逸脱、いわば「令外官」的な法・法典の新たな展開の様式を、五代宋のみならず、東アジア全体に視野を広げて検討する。さらにこれにとどまらず、法制史一般の方法論として、西洋も含めた法典編纂史を参照しつつ、本研究の遂行枠組みを練ってゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
途中成果を単著の形で、比較的早期にまとめることができたため、研究は新たな物品(主として図書)購入よりも、むしろ直接的な研究者との交流において進行した。このため、旅費は当初計画よりも多く支出したが、物品費などは少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
主として、2014年度に、当初予定していたが購入に至らなかった図書費にあてる。
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