| 研究課題/領域番号 |
26370830
|
|---|
| 研究機関 | 聖心女子大学 |
|---|
研究代表者 |
山口 昭彦 聖心女子大学, 文学部, 教授 (50302831)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
| キーワード | クルド / イラン / サファヴィー朝 / オスマン朝 |
|---|
| 研究実績の概要 |
本研究は、前近代西アジアの多民族・多宗教的な社会において、国家による政治統合がどのように図られてきたのか、そしてまた、近代への移行のなかで、かかる帝国的統治システムがどのように変容を遂げていったのかを具体的事例に基づきつつ理論的かつ実証的に明らかにしようとするものである。具体的には、現代イランの祖型を提供したサファヴィー朝（1501－1722）から、近代を迎えるカージャール朝（1796-1925）までの歴代イラン系王朝のもとで、イランの領域的枠組みがどのように形成・維持されてきたのか、その過程で西部辺境地帯にあったクルド系住民がどのように統合されていったのかを、クルド社会の支配層たるクルド系諸侯とイラン系諸王朝の王権=宮廷との関わりの中から浮かび上がらせることをめざしている。
平成27年度は、史料収集のためにテヘラン（イラン）とムンバイ（インド）に出張した。イランでは、昨年度に引き続き国立図書館・文書館において、クルド系ウラマー名家に関する任命文書を収集した。ムンバイでは、カーマ東洋研究所所蔵の写本史料の収集にあたった。ここには19世紀のイランで収集されたペルシア語写本が多く保管されており、中にはクルド地域に関わる地方史も含まれているからである。
また、サンクトペテルブルク（ロシア）で開催された「第8回欧州イラン学会大会」に参加し、イランで収集したウラマーの任命文書の分析に基づいて、17世紀から19世紀にかけて、中央政府、クルド系諸侯、ウラマー3者の関係がどのように変容したのかを論じる口頭発表を行った。
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サファヴィー朝後期、クルド系諸侯の都市定住化が進む過程で、彼らの拠点となった都市において宗教指導者や官僚層が台頭し、彼らが中央政府と結びついて諸侯の改廃を行う事例があることが確認されている。こうした中央と地域社会を媒介するような存在がどのように台頭し、また中央と地方との関係においてどのような役割を演じたのかをより長いタイムスパンで検証する。
本年度は、こうした媒介者の中でもとくに宗教指導者層の名家に焦点を当てて史料を収集し、その分析に基づいて、国際会議において口頭発表を行った。また、本研究課題に関わる論文を2点発表し、その中でも上記論点について言及した。
なお、イラン外務省の文書館での調査も予定していたが、国立図書館・文書館の入館手続きに多くの日数を要したために、実現できなかった。
|
| 今後の研究の推進方策 |
本研究では、トルコやイランなどでの史料調査とそれらの解読を進めつつ、クルド系住民が「イラン」という政治空間にどのように包摂されていったのかを明らかにすることをめざす。基本的に応募書類に示した各年度の課題に沿って研究を進めるが、状況に応じて検討する論点を適宜相互に入れ替えることで、より効率的に成果が得られるよう工夫する。また、史料収集の過程で新たな論点が見つかる場合もあり得る。逆に、史料を解読しても、所期の問題関心を満たす十分な情報が得られないこともある。いずれの場合も、入手し得た史料に沿って常に問題設定を微調整することになる。
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
図書の購入を予定していたが、予定通りには入手できなかったため。
|
| 次年度使用額の使用計画 |
図書の購入費に充てる予定である。
|
