本研究課題は、現代イランの祖型を作り上げたサファヴィー朝(1501-1722)から、近代を迎えるカージャール朝(1796-1925)までの歴代イラン系王朝のもとで、イランの領域的枠組みかがどのように形成されてきたのか、その過程で西部辺境に住むクルド系住民がどのように政治的・社会的に統合されていったのかを、クルド社会の支配層たるクルド系諸侯とイラン系諸王朝の王権=宮廷との関わりの中から明らかにすることをめざしたものである。 平成30年度は、サファヴィー朝期におけるクルド系諸部族の政治統合に焦点を当てた単行本を英語で出版するための準備として、研究成果の整理と執筆作業にあたった。平成30年4月から10月まではシカゴ大学近東言語文明学部に滞在し、研究対象時期以前の状況を明らかにするために、サファヴィー朝成立以前におけるクルド系諸部族と周辺諸王朝(ティムール朝、カラコユンル朝、アクコユンル朝など)との関係の推移を分析することに努めた。11月から平成31年3月までは、オーストリア・アカデミー付属のイラン学研究所(ウィーン)にて、サファヴィー朝前期における統合過程について分析と執筆を進めた。 執筆作業と平行して、平成31年1月および2月にはトルコのイスタンブルにある大統領府文書館にて関係史料の収集に当たった。このほか、本研究課題の成果の一部を盛り込んだ編著書として『クルド人を知るための55章』(明石書店、2019年1月)を準備・発行した。
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