研究課題/領域番号 |
26370832
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
三沢 伸生 東洋大学, 社会学部, 教授 (80328640)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | イスラーム / 回教 / アジア主義 / タタール / トルコ / 中東 / 国際研究者交流 / 交流史 |
研究実績の概要 |
本研究は、戦前から戦中、そして諸状況が一変した戦後直後を含めて、昭和前期の日本において、在日イスラーム教徒たちが、日本の政府・官界・軍部そして民間に対して関係を構築すべく講じてきた対日活動の実態を、埋もれている記述史料を発掘し、関係者への聞き取り調査を行いながら、解明していくものである。昌亜前期の在日イスラーム教徒の多くは、タタール系トルコ人、ともに反英独立活動を目指していたインド人とエジプト人であった。本研究は彼らの活動を従前呼称される「回教政策」のように日本を主体とした枠組みだけでなく、対日活動としてとらえることにより、主体を在日イスラーム教徒に据えて日本を舞台に展開した世界規模の宗教・民族運動を解明することを通して、日本とイスラーム世界との関係・交流史、また日本史を世界規模で再認識するうえでの基盤を構築することを目的とする。 当初の「研究実施計画」に基づき、上記の目的に即して、平成28年度は最終年度として研究の完成を目指したものの、研究代表者が調査・研究の根幹としているトルコにおいて予期せぬ諸テロ事件及び7月のクーデタ未遂により、政情・社会が不安定に陥った。秋以降、諸状況は正常化に戻りつつあり、10月末、3月とトルコ側の招聘によりイスタンブル・アンカラに赴くことができたものの、当初の研究実施計画の遅れを完全に取り戻すことはできなかった。 それでも、前年度までに発掘・収集した史資料の調査、戦前期日本で反英活動を展開した在日イスラーム教徒であるBrakatullahの加藤堂分析に成果をまとめて日本オリエント学会で口頭発表を行い、さらにイスタンブルで発見した戦前期に神戸で活動していたタタール系トルコ人のタタール語逐次刊行物を資料集として刊行、また日本国内逐次刊行物の諸史料をデータベース化して資料集として刊行するなどして、本研究課題の研究成果の公開を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来は平成28年度でもって終了する予定であった研究プロジェクトであったが、平成28年にトルコにおいて勃発した複数のテロ事件と7月のクーデタ未遂によって、政情・社会状況が悪化して、アンカラ大学のAli Merthan DUNDAR教授をはじめとする同国の海外研究協力者たちとの調査・研究成果の共同作業が不可能に陥り、予定していたトルコにおける補完史資料調査の実施も見送るざるを得なくなった。 秋以降、トルコの政情・社会が落ち着きを取り戻し、トルコ側の招聘により10月末および3月に短期ながらイスタンブルおよびアンカラに赴き、半年以上の遅れを取り戻すべく、研究プロジェクトの推進にあたったが、年度当初に予定していた作業を充分に取り戻すことができなかったことと、平成29年度に海外研究協力者たちとの共同研究実施の具体的な計画が立案可能となったので、本研究課題を1年間延長することとした。 研究課題の1年間延長を決めたものの、年度内に国内の学会における口頭発表、招聘に基づく国際学会における口頭発表、年度内に学術論文を4件、年度末には5件の図書刊行を行い、3年間の研究成果を公開することができた。 以上のような観点から、達成度として、本来の予定を十全に遂行することはできずに研究課題の1年間延長を行わざるを得なかったものの、研究成果公開には一定の成果を収めることができたことから、「やや遅れている」と自己点検するものである。 延長を認めいただいた最終年度たる平成29年度においてはこの遅れを取り戻し、研究課題の完成をはかり、あわせて本年度と同様に様々な形態で研究成果の公開を行うべく準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度において研究代表者が調査・研究活動の中心としているトルコの政情・社会情勢が悪化したものの、平成28年秋以降は正常にもどり、調査・研究が可能になったことから、1年間の延長を認めた戴いた本研究課題について、やや遅れている進捗状況を取り戻すべく、研究の完成のための補完史資料の発掘・分析、また海外研究協力者たちと密な研究協力を推進、本研究課題で発見した諸史資料データベースの完成をはかり、その成果を、国内外の学会口頭発表・学術論文の執筆・資料集などの学術図書の刊行をはかり、また独自のホームページで発信を行っていくものとする。 本年度の成果物に関しては、海外の関連研究機関・研究協力者(トルコ・アメリカ・ロシア・ギリシャ・スイスなど)から反響があり、共同研究の申し入れを受けるなどしており、本研究課題を国際研究交流としてさらに発展させていくことを今後の研究の推進方策としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた最終年度たる平成28年度に、研究代表者が海外の調査・研究の主体としているトルコにおいて予期せぬ諸テロ事件と7月のクーデタ未遂が勃発して、同国が政情・社会不安に陥り、同国の海外研究協力者たちとの調査連携、補完史資料の発掘・調査が不可能に陥り、平成28年度当初の研究計画実施が不充分となった。 秋以降にトルコが正常化してくる中で、10月末・3月とトルコ側の招聘にて研究代表者がイスタンブル・アンカラに赴いて調査を行ったものの、半年以上の遅れを充分に取り戻すことができずに、1年間の調査延長を申請し、承認された。
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次年度使用額の使用計画 |
延長を承認された次年度平成29年度においては、平成28年度当初に予定していた研究計画を完遂すること、具体的には本研究課題で発掘・収集した史資料を海外研究協力者たちと分析・研究を行い、同時にその史資料をデータベース化して、国内外の学会口頭発表、学術論文の執筆、史資料集など学術図書の刊行、さらに史資料のデータベースはホームページでもって世界に向けて発信していくことを計画している。
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