平成28年度には『宮崎県地域史研究』第32号に「宮崎県出土の経筒と陶製経筒・墓誌罐の比較をめぐって」として論考を発表した。すでに考察してきた日本出土の陶製経筒と中国出土の墓誌罐の形態的相似の問題に加えて、宮崎県から出土した陶製経筒についても検討した。 また明治大学日本古代学墨書・刻書土器データベースに包頭燕家梁遺跡発掘報告データベース(中国内蒙古自治区出土)と隋唐洛陽城(1959~2001発掘報告)データベース(中国河南省出土)を公表した。同データベースには平成26年度に六朝建康城遺跡墨書陶磁器データベース(中国江蘇省南京出土)、平成27年度には江蘇省鎮江墨書土器データベース(中国江蘇省出土)を公開している。南京建康城では三国呉から南朝(3世紀~6世紀)、鎮江出土陶磁器は宋代~明代(11世紀~14世紀)の墨書陶磁器が出土し、近接する地域での時期の異なる事例を紹介している。また包頭燕家梁は元末明明初(14世紀)の遺跡で、中国北方の草原ルートに繋がる地域である。洛陽城は唐の副都であり、北宋時期にも都に隣接する地域であった。洛陽城白居易故居より宋代(11世紀~12世紀)の墨書陶磁器が出土している。南方の南京、鎮江と、北方の内蒙古包頭、中原中心地洛陽、三国呉から明初のデータを揃え、墨書陶磁器の発生と発展の時間・空間的な情報を公開することができた。 平成26・27年度には南京、寧波、慈渓、また国内では九州・博多遺跡の調査を行った。平成28年度には福建省福州・泉州および上海市青龍鎮遺跡・浙江省杭州・上虞初期越窯遺跡・慈渓越窯遺跡及び江蘇省常州での現地調査を行った。福州出土の墨書陶磁器は博多遺跡出土墨書陶磁器との類似が指摘され、福岡埋蔵文化財センターでも研究調査を行った。日本を含めた貿易陶磁器の理解に墨書陶磁器は関わるものであり、調査遺跡の発掘情報の公開を待って研究成果として発表したい。
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