研究課題
三者ともにこれまでの研究成果を発表する年となった。石濱裕美子(研究代表者)は初年度に行ったギュメ大僧院での參与観察に基づき、『ダライ・ラマと転生』という著書を記した。本書においてチベットにおける転生相続制度が、仏法の継承という著名な目的以外にも、前代の財産、施主、弟子、側近たちの当代への継承という社会的機能があることを示した。また、ダライラマ5世(1617-1682)の死を秘匿し、ダライラマ6世を密かに養育しつつチベットの政権を握った摂政サンゲギャムツォの政権期を、双方の転生譜、伝記、印璽を通じて分析し、その結果ダライラマが政治的に無力な期間にあっても、摂政はダライラマの王権を奪おうとしなかったことを二本の論文に示した。うち一本はCahier d'Extreme Asieに掲載された。三月には研究代表者がホストとなり、Kreddha Foundationとともに国際会議を共催し、この三年の研究でえられた新知見に基づくチベット・モンゴル・清朝関係史をプレゼンテーションした。三月末にはロシア地理学協会にいき、ピョートル・コズロフが1905年にイフ・フレーで撮影した写真を閲覧し、当時ダライラマ13世の下を訪れていたモンゴル人巡礼者たちの写真、特に南モンゴルのシリンゴル盟長の写真などを発見した。1913年に締結されたモンゴル・チベット条約は後世国際条約に引用されなかったことから無力であるかのように言われてきたが、橘誠(共同研究者)はウランバートルの文書館の同時代史料に基づき同条約はチベット・モンゴル関係の紛争の調停に適用されていたことを証明した。小林亮介(研究協力者)は中国軍が中央チベットから撤退し、ダライラマ13世がチベットに帰還した1913年、ダライラマ13世は各国に使節をおくり様々な形で独立をアピールする外交を繰り広げていたことを論文に示した。
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『中見立夫教授退官記念論集』
巻: 単発 ページ: 印刷中
Cahiers d'Extreme-Asie
巻: 24 ページ: 169-188
史滴
巻: 38 ページ: 171-169;163-159
The Proceedings of Seminar "The Nature of Inner-and East Asian Polities and Inter-polity Relations in the 18th and 19th centruries"
巻: 単発 ページ: 1-15
Inner Asia,
巻: 18 ページ: 288-308.