本研究は第二次世界大戦の戦勝国の一つとなった中華民国が日本の戦争犯罪を裁いた東京裁判においてどのような役割を果たしたかを総合的に分析するものである。 平成29年度は本研究の最終年度であり、研究成果をまとめる段階に入った。2017年は1937年に開始された日中戦争(抗日戦争)勃発80周年の年であり、そのために中国では7月から9月にかけて日中戦争に関する多くの国際シンポジウムが開催され、私も二つのシンポジウムで発表する機会を得た。一つ目は7月に北京で開催された「紀念全面抗戦勃発80周年国際学術シンポジウム」、もう一つは9月に内モンゴル自治区のフフホトで開催された「『抗日戦争時期の内蒙古』国際学術シンポジウム」である。これらのシンポジウムで私は当初、日中戦争期の阿片・麻薬問題を取りあげ、東京裁判でこの問題解明のために中国側検察官が果たした役割を中心に分析して報告する予定であった。しかし準備が整わなかったため、結果的に日中戦争期における日本軍の法幣偽造工作、そして東亜新秩序声明と内モンゴルに関する報告を行った。これらのシンポジウム終了後に東京裁判と阿片・麻薬問題との関係について朴橿『阿片帝国日本と朝鮮人』(岩波書店、2018年)の「解説」で論究したが十分に論じられなかった。中国で出版された戦時期外交文書資料集を収集して、戦後の戦犯裁判が国際社会でどのように準備され、中国と東京裁判がどのような関係にあったのかを明らかにするというもう一つの課題は、資料集を入手することができ、解明をすすめている。 言い訳にしかならないが、2016年に現在の職場に転勤し、2017年度から所属学科の専攻主任を委されたため、学内業務に多くの時間がとられ、研究成果をまとめる時間をなかなか確保するのが難しかった。
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