研究課題/領域番号 |
26370839
|
研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
菊池 一隆 愛知学院大学, 文学部, 教授 (00153049)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 中国近現代史 / 第二次世界大戦 / 中国抗日戦争 / 太平洋戦争 / 華僑 / 抗日献金 / 日本品ボイコット / 日系人 |
研究実績の概要 |
1,計画通り、南アフリカ華僑の抗日動態とイギリス帝国下の華僑構図の本格的な解明に着手した。そして、海外旅費を使用して南アフリカでの史料調査収集、および現地調査をおこなった。したがって、夏期休暇を利用して南アフリカのケープタウン、ヨハネスブルグ、プレトリアなどの各大学、各文書館、各国公立図書館で史料収集した。各種の華僑関係英文史料、文書、新聞史料を多く入手したが、遺憾なことに『僑声報』(ヨハネスブルグの華僑新聞)は戦後のものしかなかった。また、大学業務との関係から期間が3週間と短かったこともあり、華僑関連地であるキンバリーには足をのばすことができなかった。 2,華僑街の現地調査も必要との観点からヨハネスブルグ、ダーバンなどの華僑街に行き、書店や図書館を訪れ、かつ華僑に種々のことを聞くことができた。また、華僑三世で女流作家のメラリン・ヤップ(Melanie Yap)に会い、種々質問をして当地の華僑史について認識をさらに深めた。さらに南アフリカの書店、古本屋を数多く訪れ、南アフリカ華僑の関連書籍、資料集を購入した。 3,ノースウエスト大学、公共事業研究所で依頼されて南アフリカ華僑を包括する「私の華僑研究と展望」という英語講演をおこなった。特にノースウエスト大学では華僑専門家(1900年前後のアフリカにおける中国人の研究)を含め、多数の大学教師、研究者などが集まり、質問と同時に有益なアドバイスをしてくれた。 以上のように、今年度は「南アフリカ華僑」に関する研究ノートを公表したが、これをさらに南アフリカなどで入手史料などで強化し、論文とする予定である。なお、拙稿「万宝山・朝鮮事件における日本側報道とその特色」(下記の研究発表掲載)も朝鮮華僑問題で、華僑関連論文である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1,計画通り、第二次世界大戦期の南アフリカ華僑の史料調査、研究をおこない、関連する多くの英文史料や書籍を入手した(ただし南アフリカで一貫して探した『僑声報』は未入手)。この結果、今年度公表した「南アフリカ華僑」の研究ノートを補強、強化して論文にできる。 2,華僑街の現地調査も各種聞き取りをおこない、多くの研究のヒントを得た。また、南アフリカ華僑の背景である当地の状況や歴史的背景などについても理解を深めることができた。その上、南アフリカ華僑とイギリス、もしくは同国の華僑との関連を考察する史料も一定程度入手した。さらに研究を進めたい。 3,アジアの最先端であるマダガスカル、およびインドとマダガスカルの間に位置するモーリシャスの両華僑の第二次世界大戦期の動態は極めて重要である。特にイギリス帝国下を考察する上で、今回の南アフリカ・モーリシャス・インドの関係は看過できない。このことが、今回の南アフリカで史料、および講演でのアドバイス等々から確信した。こうした発想に至ったことは今後の研究を展開する上で重要である。 4,華僑関連研究として、1931年の万宝山事件における朝鮮華僑問題について論文を発表した。 5,前回科研費(平成22年~25年)でアメリカ、ハワイ、カナダ各華僑などについてはすでに各論文を公表した。推敲、分析、新たな史料で補強し、拙著『戦争と華僑』第2巻を完成させ、出版社に渡す予定であった。ただ結論を導き出すまでに至らず、現在、最後の詰めに入っている。
|
今後の研究の推進方策 |
1,マダガスカル、モーリシャス両華僑についてはすでに入手の史料から分析を進めているが、史料が極めて不十分である。そこで、本年度は、夏期休暇を利用してマダガスカル、モーリシャスに行き、図書館、チャイナタウン、博物館などで新たな史料、補強史料を調査収集する。そして、南アフリカ華僑との共通性、差違、関係の有無などについて考察を深め、27年度、もしくは28年度中に関連論文の発表を目指す。このように、南アフリカ、マダガスカル、モーリシャス各華僑の関連については地道ではあるが、現有史料で分かる範囲から研究を詰めていき、同時に現地史料の調査収集を実施し、完成に持っていきたい。 2,今年度は第二次世界大戦期の世界華僑問題について、7月開催の広州での国際シンポジウム、9月にはパリ開催の国際学会(パリ十大学教授Samia Ferhatから連絡 )から、それぞれ報告を依頼されている。私の科研テーマとの関連報告となる。 3,イギリス、フランス、ドイツなど欧州華僑については大戦時期の動態が現在のところ不明点が多い。したがって、現在入手の少ない史料でデッサンし、関連研究、関連史料の調査収集によって一歩一歩着実に解明を目指す。 4,拙著『戦争と華僑』第2巻を完成させ、出版社(汲古書院)にもっていく。 以上のように、第二次世界大戦期のイギリス帝国下、諸国、諸地域の華僑について研究面での実証、理論を深化させたい。
|