研究課題/領域番号 |
26370839
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
菊池 一隆 愛知学院大学, 文学部, 教授 (00153049)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中国近現代政治経済史 / 第二次世界大戦 / 中国抗日戦争 / 太平洋戦争 / 華僑 / 献金 / 日本品ボイコット / 救国運動 |
研究実績の概要 |
1,計画通り、海外旅費を使用してマダガスカル、モーリシャスで史料調査収集、および現地調査を実施した。かくして、具体的には、夏期休暇を利用してマダガスカルのアンタナリボで大学、文書館、国公立図書館で史料調査、収集をした。また、モーリシャス大学で関係書籍を見た後、国立図書館に行き、戦争期、華僑青年出版の『黎明』などを入手した。ただしモーリシャスの文書館は目録を見せてくれたが、遺憾なことに現物を所有していないという。とはいえ、かなりの中国人がモーリシャスに入国していたことを知り得ただけでも大きな収穫と言える。 2,華僑街の現地調査も必要との観点からアンタナリボ、、および華僑が上陸したタマタブの各華僑街に行き、華僑関係商店、書店等を訪れた。その際、インドネシア華僑で現在、マダガスカルの会社で働いているマンディさんの支援を受け、現在の華僑に関する種々の情報を得ることができた。かくして、当地の華僑史について認識を深めた。さらにモーリシャスでは、当地で関連書籍を購入、またコピーをし、その歴史的な背景を押さえた。 3,科研関連報告としては、①中国広州で国際学術シンポジウム『華僑華人与世界反法西斯戦争』で「日本政府・中国領事館・傀儡政権と華僑」を中国語で基調報告(7月25日)、②フランス・パリの国際学術会議(5th Congress of Asian & the Pacific Studies)で、“Japan Govenment, the Chinese Embassy, Puppet Govenment and Overseas Chinese in Japan”を英語報告(9月11日)。かくして、多数の大学教師、研究者などと有益な質疑応答ができた。 4、27年度は研究ノート「マダガスカル・モーリシャス各華僑」、および論文「世界各地の華僑排斥」を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1,計画通り、第二次世界大戦期のマダガスカル、モーリシャス両華僑の史料調査、研究をおこない、関連する英文・中文史料や書籍を入手した(ただしモーリシャスでは文書館では目録を見ただけで档案史料未入手)。この結果、今年度公表した「マダガスカル・モーリシャス両華僑」の研究ノートを補強、強化したい。 2,華僑街の現地調査も各種聞き取りをおこない、多くの研究のヒントを得た。例えば、前年度に研究した南アフリカ,マダガスカル.モーリシャスの各華僑が移動との関係でどのように結びつくことが理解できた。すなわち、マダガスカルは地勢的にはアフリカに所属するが、文化、経済的にはむしろアジアの最先端に位置するのではないか。また当地の状況や歴史的背景などについても理解を深めることができた。さらに研究を進めたい。 3,インドとマダガスカルの間に位置するモーリシャスの両華僑の第二次世界大戦期の抗日動態は極めて重要である。特にイギリス帝国下を考察する上で、今回の南アフリカ・モーリシャス・インドの関係は看過できない。さらに中国、フランス各国際学会で関連報告をおこない、多数の質疑応答から世界華僑の動態を深める契機をえた。 4,華僑関連研究として、戦時期の世界規模での「華僑排斥」に関する論文、及びマダガスカル・モーリシャス各華僑に関する研究ノートを発表した。 5,これまでの科研での研究を基礎とした拙著『戦争と華僑』第2巻を完成させる予定であったが、全体を読み直しながら、推敲、新史料による補強、結論を出すのに時間がかかり、遺憾ながら最終脱稿に至っていない。だが、もう少しで完成する。
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今後の研究の推進方策 |
1,ミャンマー・インド両華僑についてはすでに入手の史料から分析を進めているが、史料が不十分である。そこで、本年度は、夏期休暇を利用してミャンマーかインドに行き、大学、図書館、チャイナタウン、博物館などで新たな史料、補強史料を調査収集する。そして、南アフリカ、マダガスカル、モーリシャス各華僑との関係、共通性、差違などについて考察を深める。28年度、もしくは29年度中に関連論文の発表を目指す。このように、ミャンマー、インド、モーリシャス、マダガスカル、南アフリカ各華僑の関連については未知の部分が多く、地道ではあるが、現有史料で分かる範囲から研究を詰めていき、同時に現地史料を調査収集し、補強したい。 2,イギリス、フランス、ドイツなど欧州華僑については大戦時期の動態について、イギリスとドイツは現在のところ不明点が多い。とはいえ、本科研のテーマからいって、特に戦時期のイギリス華僑については研究を早急に進める必要がある。したがって、現在入手の史料でデッサンし、新たな史料や関連研究で補強し、研究ノートして発表する。 3,拙著『戦争と華僑』第2巻は大部(400字詰め約1200枚)のため、前述の如く全体の読み直し、推敲、新たに入手した史料により、充実を図っているが、なかなか完成しない。しかし、今年度こそ『戦争と華僑』第2巻を完成させ、出版社(汲古書院)にもっていき、科研出版助成金に応募する。 以上のように、第二次世界大戦期のイギリス帝国下、諸国、諸地域の華僑について研究面での実証、理論を深化させる。
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