研究課題/領域番号 |
26370842
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
江村 治樹 龍谷大学, 文学部, 教授 (80093201)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 古代都市 / 古代国家 / 新石器時代 / 二里頭文化 / データベース / 国際情報交換 / 中国 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、中国の考古学の報告書、考古学関係雑誌、国家文物局主編『中国文物地図集』(文物出版社)の「安徽分冊」「湖北分冊」「山東分冊」「河北分冊」「山西分冊」「陝西分冊」「内蒙古分冊」などから新石器時代から殷周時代の城壁都市遺跡、都市的聚落、環濠聚落遺跡並びにその周辺の遺跡の資料を検索、収集し、データベースソフトの「ファイルメーカー」によって、画像、地図も含めてデータベース化を行った。あわせて新石器文化や中国古代国家形成および国家構造に関わる論文内容もデータベースに組み込み、中国古代国家形成論の研究史整理に備えた。 そして、これまで収集した中国新石器時代の都市および国家に関わる資料を整理、分析して、当該時代の都市の興廃、都市や聚落の編成を地域的に検討した。その成果は、「先秦都市社会の形成(続)-新石器時代-」(東洋史苑86)として公表した。本論考では、河南地域と四川地域は新石器時代以後も都市が継続的に発展し、広域国家形成に向かうのに対して、他地域では都市が衰退し殷周広域国家の支配下に入ることを明らかにしたが、その理由として地理的要因(文化、交易の中心)が注目されると考えた。 現地調査に関しては、四川大学の三浦国雄客員教授、姜生教授、成都市文物考古工作隊、成都文物考古研究所の劉雨茂研究員(隊長)等の協力を仰ぎ、成都市周辺の新石器時代の都市遺跡を調査し多くの新知見を得た。また、同時に四川大学、四川省文物考古研究院の座談会にて、上記の新石器都市に関わる論考の概要を報告し、多くの有意義な意見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、都市社会の側面から中国古代国家の形成過程を捉え直すことであり、国家の萌芽が想定される新石器時代、広域国家が成立する殷周時代における都市社会と国家の関係を解明することに重点を置いている。本年度では、新石器時代から二里頭文化、殷代にかけての都市と広域国家形成との関係の解明をめざし、当該時代の都市遺跡のデータベースを全面的に再検討し、新資料の追加、不備に対する補完を行い、より完成度の高いものとした。そして、中国初期国家に関わる内外の研究の整理を集中的に行ったため、以後の広域国家に関わる殷周時代の甲骨文、金文資料、中国古典籍を対象とする都市と国家に関わる資料の収集は進展しなかった。現地調査に関しては成都市周辺の新石器時代の都市遺跡調査を行い予想を越える新知見が得られたが、陝西省の西周国家に関わる周原遺跡、豊鎬遺跡の調査は諸般の事情により実現しなかった。以上のデータベース資料と現地調査により、初期国家の形成について、河南省を中心とする中原地域および四川地域とそれ以外の地域において異なる展開が見られることを具体的に明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は新石器時代から殷周時代の都市遺跡のデータベースの不備をチェックし、さらに完成度を高めることを目指す。また殷周国家論の整理を行い、甲骨文、金文資料、古典籍をも参照して殷周国家の実態の解明を目指す。加えて国家起源論に関わる中国語論文の翻訳も進める。現地調査としては、本年度行いえなかった陝西省の西周国家に関わる周原遺跡と豊鎬遺跡の調査を予定している。 以上を踏まえて総括的検討を行う。すなわち新石器時代の都市の形成から殷周広域国家がいかにして出現するのか、殷周広域国家が次の新しい春秋戦国国家にいかに展開するのか、都市社会という一貫した視座から古代国家の形成過程を通観することを目指す。そして、研究成果を印刷に附し、報告書として公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
陝西省における西周都市遺跡の現地調査を計画していたが事情により実現しなかった。また、既刊の中国考古学の報告書も品切れ等で予定通り購入できず、また本年度は新しい報告書もあまり刊行されなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は陝西省における現地調査を計画しており、旅費の他、現地協力者への謝金が必要となる。また中国考古学の報告書や国家論に関わる書籍の購入も極力努力をするが、入手不可能な報告書や中国考古学関係雑誌は日本や中国の図書館を調査し関係資料を入手する。このためかなりの出張旅費が必要となる。
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