初年度から各年度にわたって、中国考古学の報告書、考古学関係雑誌、『中国文物地図集』などから、新石器時代から殷周時代の都市遺跡の資料を検索、収集し、データベースソフト「ファイルメーカー」によってデータベース化した。そして、このデータベースを整理して「新石器時代都市遺跡表」「新石器時代都市分布図」を作成した。また前々年度からは古玉器のデータベースの作成を開始した。 初年度は浙江省杭州市を中心とする都市遺跡と玉器の現地調査を行い林華東氏などから最新の情報を収集し、前々年度は四川省成都市を中心とする新石器時代都市遺跡の現地調査を行い現地の考古学者から最新の情報を収集した。そして、最終年度には陝西省西安市西方の西周・春秋時代都市遺跡を調査し、現地の考古学者や博物館において最新の情報を収集した。 以上の「新石器時代都市遺跡表」、先の科研費で作成した「二里頭・殷周都市遺跡表」および都市遺跡の現地調査、中国の考古学者の情報に基づき、新石器時代から二里頭文化期の都市社会を分析し、都市の出現と初期国家の関係、二里頭文化期以後、殷周時代の広域国家への展開について都市社会の側面から考察した。その結果、新石器時代にはいくつかの地域に都市が出現し国家の萌芽が認められた。しかし、黄河中流域と成都周辺地域以外ではその後都市は衰退し初期国家も断絶してしまう。中国の黄河中流域の都市の発展については、この地域が文化交流や交易において中国の中心に位置したからだと考えられる。この地域の都市と国家の発展は、次の二里頭文化期、殷周時代にも受け継がれ、戦国時代の都市の発展をもたらすのも同じ理由による。この成果は「先秦都市社会の形成(続)-新石器時代」(東洋史苑86・87合併号、2016年3月)として公表し、この論文と現地調査の成果をまとめて研究成果報告書『中国古代国家の形成と都市社会』(2018年3月)を公刊した。
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