本研究は、17世紀から20世紀に至るまでのこれまで未解読だったさまざまな満洲語の古文書・古地図を中心に解読し、大清国における国境形成の歴史を明らかにすることを目的とする。平成26年度は、日本国内の東洋文庫と国会図書館所蔵の地図や古文書資料の調査を行い、また、台湾・ロシア・モンゴル国所蔵の古地図に関するデータを収集し古地図データの目録を作成し、国内外に所蔵されている地図の目録と所蔵状況を明らかにした。 平成27年度は、清末に作成されたモンゴル語地図については、日本の天理図書館とドイツ所蔵のものを確認することができた。これによって伝統的な漢文地図と異なる遊牧地や寺院、祭祀たるオボオを中心に製作された地図群の存在が明らかになった。また、康煕、雍正時代に北京測量で活躍したモラヴィア出身のシラヴィチエック関係資料・絵画・古文書を収集することができた。さらに台北国立故宮博物院所蔵の満洲語の地図の解読が進み、イギリス、フランス、ロシアなどの国に所蔵されている関係地図と比較研究を行い、多くの新発見があり、大きな成果を上げた。これらの研究成果を北京と台北で行われた古文書の国際会議に発表した。 平成28年度は、これまで網羅的に収集した基礎資料を分析して学術論文を執筆し、その成果について、学術論文を『自然科学史研究』・『清史論叢』・『衛拉特研究』に発表した。このほか、2016年1月23日に国際ワークショップ「ジューンガルに関する歴史研究最前線」を京都で開催し、その内容が『読売新聞』(2016年2月8日夕刊)に取り上げられ、研究成果を専門の研究者だけではなく、社会にも発信することができた。また、2016年8月5日に「満洲語文語夏季講座2016」を開催し、国内外から32名が受講した。今後も継続的に発信していく予定である。
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