本課題「『遼史』地理志の研究ー出土資料と実地調査に基づくー」は、平成23~25年度科研費研究課題「『遼史』の再構築ー契丹文墓誌を主資料としてー」達成後の新資料の増加、研究の深化を踏まえ、『遼史』において最古の原資料を反映し、研究上の問題点も山積している地理志を対象として、中国内蒙古自治区東部、遼寧省西部、河北省北部における考古学的現地調査によって獲得された知見を活用することによって、単なる文献学的研究ではなしえない地理志の再構築を目指すものである。本年度においては、以下のような作業を進めた。 ①中国内蒙古自治区東部における契丹古城遺跡と二院皇族の墓誌出土地に対する実地調査を行った。通遼市所在の内蒙古民族大学の要請によって「契丹国の文化体制上の二重構造」の演題で講演を行った。 ②中国遼寧省北部の山岳地帯に赴き、新発見の横帳季父房・国舅大翁帳・国舅小翁帳の墓誌出土地および遼代の豪州遺址・遼州遺址を訪れ、実地踏査を行った ③河北省青龍県における新発見の遼代墓葬および通遼における新発見の龍化州遺址の出土物について研究を行った。 以上の作業によって、遼の横帳・国舅帳所轄地域内の関連遺跡、河谷に関する地理的、考古学的所在状況について豊富な知見を獲得した。
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