研究課題/領域番号 |
26370847
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
村田 勝幸 北海道大学, 文学研究科, 教授 (70322774)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 南北アメリカ / 黒人史 / 都市史 / ニューヨーク |
研究実績の概要 |
平成26年度は、20世紀ニューヨーク都市史・都市政治史に関する先行研究を黒人コミュニティとの関連から批判的に再検討するという「文献研究」と、平成27年度以降の現地調査での成果を最大化させるための「予備調査」という二つの柱からなっていた。前者に関しては、これまで20世紀ニューヨーク都市史のなかで分析対象となってきた人種・エスニックな集団の歴史や実態構造などに関する個別特殊な実証研究がきわめて断片化されたかたちで積み上げられる傾向があったことがあらためて明らかとなった。(都市政治史をひとつの重要な軸とする)ニューヨーク都市史という共通の文脈のなかでそうした一群の個別研究を関連づけることではじめて統合的な歴史像が浮かび上がること、さらにはそこに新たなニューヨークの黒人コミュニティ史像を書き加える余地があることを、先行研究の批判的再検討を通じて確認できたことは大きな収穫であった。また後者に関して、「予備調査」という位置づけである当該年度の現地調査は、ニューヨーク市公文書館所蔵の資料の検討を足がかりにすることで、今後の「本調査」「補足調査」の方針を精緻化することを中心的な目的としていた。調査の過程で重要な資料を多く入手したが、なかでも選挙区の改編や住民の居住状況、あるいは特定地区の再開発に関する公的な文書は、地理的な境界線(ないし空間)から黒人コミュニティを捉え直すという本研究プロジェクトの中心的主題に関わるものであり、本研究の可能性と意義を感じさせてくれるものであったと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究の批判的再検討を目的とした文献研究と予備的現地調査という二つの課題に関しては、おおむね当初の目的を達成できていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
予備調査の成果も踏まえ、「ブルックリン中部の黒人コミュニティと都市史の関係」という具体的なテーマに関する研究(文献研究と現地調査の両方)という次のステージに進みたい。なお、本プロジェクトの立ち上げ時にはあまり注目されていなかった、黒人住民と警察や刑事司法制度との関係というテーマが、今日アメリカでは喫緊の争点として議論されている。20世紀ニューヨークの黒人コミュニティの歴史社会状況を考えるうえでも、じつは刑事司法制度と人種(主義)の関わりや「警察の残虐行為」という論点はきわめて重要であり、私自身もこれまで著書『アフリカン・ディアスポラのニューヨーク』(2012年)のなかで実証的に論じてきた。本研究プロジェクトを推進するにあたり有用と思われる場合は、これらのテーマや論点とも結びつけて分析を進めたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、購入を予定していた文献・資料が年度内に入手できないことが判明したため、購入を見送ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に繰り越すことで物品等の購入可能額が大きくなることも勘案し、より高額の資料を購入することも選択肢に入れて、文献・資料の購入にあてたい。
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