研究課題/領域番号 |
26370847
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
村田 勝幸 北海道大学, 文学研究科, 教授 (70322774)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 南北アメリカ / 黒人史 / 都市史 / ニューヨーク / 西インド諸島 / 移民 / コミュニティ |
研究実績の概要 |
平成29年度の研究課題は、ニューヨーク最大の黒人コミュニティであるハーレムの北西部に展開するワシントン・ハイツについて、20世紀後半以降を対象に一次史料を基にした実証分析であった。1980年代以降、同地区において最大のエスニック集団であるドミニカ系は、広義には「アフリカン・ディアスポラ」の一部と捉えられることも多い一方で、自ら「黒人」として自己同定しているかどうかは非常に曖昧で、その意味でもかれらの存在を軸にワシントン・ハイツの社会的・空間的な境界線引きを分析するという課題は研究価値の高いものと言える。だが逆説的ながら、対象時期の新しさや研究課題とオリジナリティゆえに、関連する先行研究がほとんどないことに加え、一次史料が体系的に存在しないことが、予備調査の過程で判明した。Robert W. Snyder, Crossing Broadway: Washington Heights and the Promise of New York City (2015)は、数少ない関連する本格的な歴史研究と言えるが、同書の精読などを通して、当初の研究枠組みで実証研究を行うことが生産的でないという結論に達した。そこで本年度は、これまでに中央ブルックリンとハーレムに関して渉猟してきた一次史料を読み込んで分析を深めるとともに、最終年度である来年度により精度の高い研究総括に向けた準備作業を行うことに方針を転換した。 当該年度に発表された研究成果としては、黒人住民が置かれた人種主義的状況を論じた英語論文、“Solidarity Based Not on Sameness: Aspects of the Black-Palestinian Connection,” Japanese Journal of American Studies, no. 28 (May 2017): 25-46がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の分析対象として設定していたワシントン・ハイツに関する先行研究および一次史料が当初の想定よりも著しく限られていたため、大きな計画変更を迫られたため。しかしながらそれによって生じた時間的な空白を埋めるかたちで、それまでの分析対象である、中央ブルックリンとハーレムに関する補足的な考察と、研究プロジェクト全体に関わる構想の検討を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成30年度は、現地調査を踏まえた一次史料と知見を、関連する先行研究の精読によって得られた理論的枠組みにそって形にする作業に本格的に移る予定である。こうした課題は単独の作業で推敲することは困難であるため、アメリカにおいて専門家と議論をする場を多く設ける必要がある。そのため、本年度の後半期に、2ヵ月ほどのアメリカでの在外研究を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画に変更が生じ、現地調査を取りやめたため、予定していた額の支出が発生しなかったため。最終年度である今年度は、比較的まとまった期間、アメリカで現地調査を行うことを計画しており、繰越し分を本来の本年度割当分と合わせて使用する予定である。
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