本研究では、ニューヨークのなかでも代表的な「黒人コミュニティ」である中央ブルックリンと北部マンハッタン(ハーレムとワシントンハイツ)に注目し、質的変化と空間的変化というふたつの側面に関して歴史学的な分析を行った。前者は主に「誰が中心的な住民であるか」に関わり、後者はコミュニティの空間的境界の移動に関わる。1960年代後半以降、西インド諸島からの黒人移民の増加を受けて多様性が急速に増した中央ブルックリンが前者を、1960年代以降、コロンビア大学によるハーレムへのキャンパス拡大をめぐって黒人学生や住民が展開したコミュニティの境界線をめぐる攻防が後者をそれぞれ集中的に顕在化した歴史事例である。
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