研究課題/領域番号 |
26370848
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
大峰 真理 千葉大学, 文学部, 教授 (70323384)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 18世紀フランス・ナント / 海運業 / 沿岸貿易 / フランドル地方 / アイルランド島 / イベリア半島 |
研究実績の概要 |
平成26年度研究実績の第一は、本研究期間の開始直前に印刷・発行した『船舶艤装申告書一覧1694~1744年 ロワール=アトランティック県文書館(フランス・ナント)Serie120J 18世紀フランス・ナントによるヨーロッパ沿岸貿易の痕跡』にもとづき、データ処理に着手したことである。その結果、出港目的を「ヨーロッパ沿岸交易cabotage」と申告した916隻について、時系列での数量変化と地理的な偏差を確認できた。つまり、全体の26%にあたる236隻は1694年から1701年まで出港しており、統計が取られ始めた時期のもっとも初めの数年間に沿岸貿易向け船舶の艤装が集中していたことがわかった。また地理的偏差を観察してみれば、フランドル地方・ヘントに向う船が299隻数えられ、これは全体の33%を占める。ついでアイルランド島に向う船が98隻(11%)あり、これら二つの目的地に向う船舶が全体の43%を占めたことを抽出できた。さらに第三の目的地としてイベリア半島・リスボン(80隻、9%)が確認できた。つまり、一次史料情報の一覧化と初期のデータ分析をとおして、ナント海運業がとくに17世紀の最末期においてフランドル地方とアイルランド島とをおもな取引対象地域としながら、また中世以来の取引相手先としてよく知られるイベリア半島がこの時期にも一定の割合をしめながら、いとなまれる様子を実証できたのである。 研究実績の第二は、上述の第一の実績にもとづいて分析、考察のための方向性が定まったことである。つまり、「ナント海運業者たちがフランドルとアイルランド、イベリア半島を取引相手先地域とする歴史的理由はどこにあるのか」「この時期の沿岸交易は、その後の奴隷貿易港ナントの何を形作るのか」という問題関心を得ることができたのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までに調査・整理した史料情報にもとづくデータ処理と初期の分析を効率的に進めることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度交付申請書に記したとおり、これまでに得られた知見を学術論文にまとめ投稿、公開する。 沿岸貿易と並んで重要な活動分野であるアンティル諸島直行貿易について、平成26年度に行なったことと同様、データ化と初期の分析に着手する。
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