研究課題/領域番号 |
26370852
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
菅 美弥 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (50376844)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 米国センサス / 人種 / マイノリティ / 連邦とローカル / 調査の実態 / 「その他」 / 総合的な歴史像 / 移民政策 |
研究実績の概要 |
本研究は、米国センサスにおいて公式の指示がないなかでのマイノリティへの調査の実態と「その他」に対するまなざしについて総合的な歴史像を描くことを目的としている。今年度は、国際ワークショップの開催や日本アメリカ学会年次大会での発表を通じて研究推進に力を入れた。6月にはアメリカ・センサス史の大家、ミルウオーキー大学ウイスコンシン校のマーゴ・アンダーソン教授と、米国商務省センサス局のデービッド・ペンバートン博士を招聘し、学会でのパネル発表や国際ワークショップでの発表と議論を行った。 日本人の異人種間結婚のファミリーについては、研究発表と関連する論文を公刊したほか、「アジア系」という現代のセンサスにおける人種分類を歴史化し、「アジア」の概念図が如何に出来ていったかを明らかにした。そこで、19世紀後半から20世紀にかけて中国や日本と、シリアやアルメニアといった、異なる「アジア」からの移民に対するセンサス調査実態を解明する論文を執筆した。これら二つの論考の詳細は以下の通りである。“Japanese Interracial Families in the United States, 1870-1900: What the Census Manuscript Population Schedules Reveal,”The Japanese Journal of American Studies, 26, 2015, pp.75-97.「『アジア』の包摂と排除:19-20世紀転換期米国センサスのポリティクス」、飯野正子他、『エスニック・アメリカを問う 「多からなる一つ」への多角的アプローチ』彩流社、2015年11月。 さらに、ニューヨークにおける初期日本人移民の異人種間結婚についての招待講演を行ない、職業、出身地、「人種」欄の記載などその全体像をセンサス調査票から明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度、国際ワークショップを開催したほか、日本アメリカ学会でのパネル発表を通じて、国際的な研究交流を飛躍的に進めることができた。6月に行った国際ワークショップと学会発表の詳細は以下の通りである。「米国国勢調査とAmerican Community Surveyの統計調査システム」企画・運営・司会(使用言語:英語)2015年6月、法政大学。“Recounting International, Interracial, and Multicultural Families among Japanese Immigrants through Census Manuscript Population Schedules,” Workshop: Census and America: The Past and Present of the Statistics on Race and Ethnicity, The Japanese of American Studies, The 49th Annual Meeting of the Japanese Association for American Studies, 2015年6月、国際基督教大学。このほか、2016年3月にも米国商務省センサス局の人口センサスおよびアメリカンコミュニティサーベイの責任者による国際ワークショップを行い、司会を務めた。 このほか、史料である膨大な数の手書きのセンサス調査票を、時代・地域を横断して収集し、データベース化する作業を、研究補助者への徹底的な指導を行ったことで、史料収集に非常に大きな進展があった。研究の中間報告として学会での共同発表を行い、論文を公刊したことと、1年を通して国際的な共同研究を飛躍的に進められたことにも鑑み、研究課題への達成度は自己評価として高いものである。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策については、平成27年度と同様に、米国センサスによるマイノリティへの調査実態について総合的な歴史像を描くため、時代区分を限定して研究を進めることはせず、時代横断的に調査票やその他の史料を収集し検証することとしたい。膨大な調査票の収集とデータベース化には研究補助者への指導をさらに徹底して効率的に行う工夫をする。最終年に当たる今年度は、収集した手書きの調査票資料をデータベース化する作業に上半期を中心としてあたる。 また、課題2: 19世紀中葉以降の「カラー」「人種」分類の変容と移民政策のリンケージについて、「ジャパニーズ」と「アジア」からの移民に対する政策全般を俯瞰しながら、検証する。特に、「ジャパニーズ」がセンサス調査票に最初に記載があったのが1860年であったこと、1870年には「若松コロニー」の移民へのセンサス調査の背景と実態を、日米関係史、アジアへのアメリカのまなざしの変容との文脈から解き明かしていきたい。また、夏期に現地での調査を行い史料収集やインタビューを行う。さらには、これまでの研究の成果について発表し、論文としてまとめるほか、米国センサス局の専門家や研究協力者との国際研究交流もいっそう推進することとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、研究補助者が有能でありまた徹底的な指導を行ったので、来年度に残額分を充当させて引き続き効率的に資料収集とデータベース化の作業を行うこととしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度、データ入力のための研究補助に使用する。
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