研究課題/領域番号 |
26370853
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
貴堂 嘉之 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (70262095)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 優生学運動 / 産児調節 / 冷戦 / ホロコースト / 家族計画 |
研究実績の概要 |
第二次世界大戦後のアメリカ優生学運動とその海外への伝播・発展過程を検証する本科研課題では、重点研究領域として、①ドイツの戦後処理とアメリカの関係、②アメリカ「帝国」領域における優生学的実践1(プエルトリコ、グアム、フィリピン)、③アメリカ「帝国」領域における優生学的実践2(日本(沖縄含む)、韓国、東南アジア、アフリカ)、④戦後アメリカ国内における断種実践、黒人貧困層を対象とした南部社会における福祉施策、など4つを設定した。 計画初年度にあたる平成26年度は、①のドイツの戦後処理とアメリカとの関係を重点研究対象とし、1)ニュルンベルク裁判等での優生学・医学(安楽死)の扱いや、2)戦後のカイザー・ヴィルヘルム研究所の組織改編と米軍統治・アメリカ人科学者との関係、3)中東戦争以後のアメリカにおける「ホロコースト」の記録の管理、を中心に研究資料を収集、分析し、研究を推し進めた。戦後70年を前に、ドイツやアメリカでもニュルンベルク裁判関連の資料や研究書が刊行され、戦後初期の米独関係についても、CIA関連文書をもとに旧ナチ・エリートをアメリカが積極的にリクルートした実態が明らかにされるなど研究史上の大きな進展もあった。こうした資料・研究書をもとに、戦後初期の米独関係、冷戦期文化の検証を行った。 こうして研究が計画通り進展した一方で、平成26年度に計画していたポーランドのアウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所の訪問調査は、学務の関係で日程調整が厳しく、平成27年度以降に延期することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度に重点的に検証するドイツの戦後処理とアメリカの関係を扱った研究書、資料等は、とくに①ニュルンベルグ裁判関係、②戦後のドイツカイザー・ヴィルヘルム研究所関係の研究およびドイツ医学関連資料、③対ドイツ米軍統治関連資料、④「ホロコースト」の記憶の管理をめぐる研究書、戦争犯罪関連資料の収集はほぼ計画通り、達成することができた。 しかし、8月末にポーランドのアウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所を訪れ、当地における観光ツーリズムに関する調査を実施する予定だったが、公務の関係で平成27年度以降に当地での海外調査は延期した。
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今後の研究の推進方策 |
本科研課題で重点研究領域として設定した、①ドイツの戦後処理とアメリカの関係、②アメリカ「帝国」領域における優生学的実践1(プエルトリコ、グアム、フィリピン)、③アメリカ「帝国」領域における優生学的実践2(日本(沖縄含む)、韓国、東南アジア、アフリカ)、④戦後アメリカ国内における断種実践、黒人貧困層を対象とした南部社会における福祉施策、の四つの領域のうち、①については平成26年度にほぼ達成されたので、平成27年度は②のプエルトリコ、グアム、フィリピンなどいわゆるアメリカ「帝国」領域における優生学的実践を検証することを目標として、研究を推進する方針である。平成26年度に計画されていたアウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所訪問は、平成27年度以降の調査に組みこみ、研究計画を変更して、対応する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた海外出張を次年度以降に変更したため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の交付額とあわせて海外調査の旅費として使用する予定である。
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