アメリカ合衆国における1930年代以降のニューディール期は、専門化、科学化、国家機構の拡充を基調とするアメリカ型社会政策国家の確立期とされてきた。しかしニューディール期前夜と言うべき1920年代はじめまでに注目するなら、そこではそもそもあるべき「社会」の構想が問われ、その担い手や方法をめぐって折衝がつづいた。本研究はとくに、第一次世界大戦期に総力戦体制を担った全米国防会議関連史料と、社会政策実践の一翼を担ったセツルメント・ソーシャルワーク運動関連史料とをあつかい、ニューディール期再考の起点を提示した。20世紀初頭に遍在した包括的な社会政策国家への願望は、この交渉の過程で縮退していった。
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