本年度は、平成27年度の実施状況報告書の「今後の研究の推進方策」で計画されたとおり、ほぼ順調に研究を進め、科研最終年度にふさわしい研究成果を出すことができた。 野村は、戦後イスラエルに対し、ポーランドに次ぐ大量のユダヤ人移民を送り出したルーマニアについて、ホロコーストに遡るその歴史的経緯ならびに戦後のイスラエル・ルーマニア関係の一端を明らかにし、論文「ホロコーストとルーマニア」(前篇・後篇)(『金沢大学経済論集』第36巻第1号、第2号)ならびに「ルーマニアにホロコーストはなかった?」にまとめた。後者の論文は、2017年中にミネルヴァ書房より刊行予定の橋本伸也編『中東欧・ロシアの歴史認識問題』に収録されることが決定している。 武井は、戦後ドイツの対イスラエル補償ならびに国家的軍事支援の実態をドイツならびにイスラエル双方のリアルポリティクスの観点から分析し、著書『<和解>のリアルポリティクス』(白水社)を刊行した。 金城は、ヨーロッパからの人の流れ(野村の研究成果)とモノ・カネの流れ(武井の研究成果)を得て成立したイスラエルの建国問題をパレスチナ人の視点から検証し、論文「パレスチナ問題をめぐる語りの変容」をまとめた。論文は、ミネルヴァ書房から刊行された松尾昌樹ほか編『中東の新たな秩序』に収録された。 さらに2017年5月27日開催の日本ユダヤ学会大会では、本科研費研究のベースになった問題意識を盛り込んだシンポジウム「現代イスラエルの課題」の開催が決定し、金城が研究成果の一部を報告することになっている。
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