アルプス諸地方の中近世史を特徴付ける渓谷を枠組みとした共同体は武装能力と自治において際立ち、アクティヴな政治主体でもあった。本研究はそうした共同体の政治的行為能力の基盤が共同体相互のコミュニケーションと結合・連合であったことを重視した。そのうえでティロル、スイス南部、ロンバルディア北部、西部のローヌアルプのアルプス諸地域における歴史的条件の相違、領邦ティロル、都市国家ミラノ、スイス盟約者団、サヴォア公領など、各地域の政治構造の多様性をふまえ、地域共同体の実態と、当該地域の政治権力との間の相互関係を明らかにし、各々の地域における中世後期から近世にかけての国家統合のダイナミズムを比較考察した。
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