研究課題/領域番号 |
26370861
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
水井 万里子 九州工業大学, 教養教育院, 教授 (90336090)
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研究分担者 |
水谷 智 同志社大学, グローバル地域文化学部, 教授 (90411074)
和田 郁子 岡山大学, 社会文化科学研究科, 特任助教 (80600717)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | インド植民都市 / 東インド会社 / 植民都市社会史 / 女性 / こども / 混淆 |
研究実績の概要 |
本年度は、イギリスのインド植民都市における社会史的実証史料研究のための実証手法の確立を主たる目的として以下の成果をあげることができた。まず、植民地社会の親密圏やその境界領域における社会史の叙述について、インド植民都市内部で生まれ展開する社会的関係性の諸相である人種主義・民族主義、ジェンダーという問題群を孕んでいることを十分に見据えた上で、以下の植民都市に関する収集史料群の読解を行った。一つは東インド会社(英、蘭)の商館文書群、書簡群、会社役員会議事録群、次に英領カルカッタ関連史料群、植民地統治関連の同時代記述である。 次に、研究代表者・分担者を中心に、植民都市史叙述とその史料読解の研究方法として学術的評価が高い科学思想史図書の翻訳出版を行った(カピル・ラジ著、水谷智・水井万里子・大澤広晃訳『近代科学のリロケーション』名古屋大学出版会、2016年)。同書はイギリス東インド会社関係者、イギリス帝国関係者の書簡や著作などの思想史史料が、当時の社会の史的再構築に大きな役割を持つ可能性を示唆しており、科学や技術にまつわるヨーロッパ人とインドの人々の文化が、二者間で循環しつつ新たな領域の文化を創りだしていく過程を論じている。このことが研究代表者の東インド会社史料研究にとって史料読解の方法的な指針となった。最後に、研究分担者和田、水谷が、それぞれが著した論文で、本研究課題の社会史実証研究の成果を発表し、植民都市の女性・こどもに関わる混淆の諸相について植民都市社会史として論じた。最終年度としての本年度の大きな成果は、この2年間に発表した女性についての植民都市社会史で使用した史料の領域をさらに広げ、社会史史料のみならず、文化史・思想史史料に研究対象を拡大したところにある。これにともない発表した成果も女性についての議論だけでなく教育や法制度といった分野に研究の対象を展開している。
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