近世イングランドにおける帰化制度とその歴史的背景、移民受容について、17世紀前半以降18世紀前半までの帰化とデニズン取得者の実態やユダヤ人の一般帰化をめぐる議論に関する研究を進めた。後者については資料収集を中心に行った。帰化制度については従来制度の変遷のみが明らかにされ、取得者の実態や一般法における帰化法制定をめぐる議論については、とりわけ18世紀以降については研究がなされていなかった。本研究では、近世における外国人の帰化制度の変遷をその歴史のコンテクストと照らし合わせながら明らかにした。またこれらの法的地位取得者の実態分析を行い、同時期の移民集団の特徴と比較検討を行いながら、法的地位取得者の特徴を検出した。その結果、イングランド社会が、イングランド社会に裨益する、とりわけ貿易を促進する商人や輸入代替を促進する産業技術をもつ外国人に法的地位を付与したことが明らかになった。法的地位を求める外国人は外国人の中では少数派であった。法的地位を希望する外国人はイングランドで商業を展開し、遺産相続を希望する富裕な商人にであった。とりわけ18世紀においては、増加するユダヤ人や黒人、アイルランド人ではなく、少数派であったドイツ系、ロシア・東欧系の商人達であることが明らかになった。この点は従来のイギリス移民研究では看過されてきた点であり、本研究独自の研究実績である。 研究期間中、ロンドンで近世イングランドのおける外国人の帰化に関する資料を収集、精読した。国内のシンポジウムや学会に参加し、関係の研究者と意見交換を行った。その成果の一部を論文として刊行した。
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