第1に、外国人の法的地位とそれに対する地域社会の対応について、近世におけるロンドン市民権やデニズンを手がかりに分析を行った。ロンドン市民権は移民にとって取得困難な特権的地位であること、その既得権を守るために、ロンドンでは「血統主義」による自己と他者の差異化の論理を適応したことが明らかになった。第2に、18世紀前半には法的地位取得者(帰化、デニズンともに)の減少傾向と、取得者が主としてドイツ系商人であり、法的地位が社会に裨益する外国人のための経済的利益追求の手段として認識されていたことが明らかになった。近世イングランド社会の外国人や彼らの法的地位に対する認識は画一的ではなく多層的であった。
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