研究課題/領域番号 |
26370866
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
中野 博文 北九州市立大学, 外国語学部, 教授 (10253030)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 門戸開放通牒 / 女性参政権 / A・E・ヒッピスレー / W・W・ロックヒル / ヘンリ・アダムズ |
研究実績の概要 |
今年度は初年度に収集した資料の分析に基づいて中間成果を発表するとともに、あらたに発見した研究上の論点を探求するための新資料の収集に努めた。 中間成果をとりまとめた単著『ヘンリ・アダムズとその時代』は8月末に脱稿し、2月末に彩流社から公刊した。この公刊に先立って関西アメリカ史学会第249回例会(2月7日 キャンパスプラザ京都第4講義室)で「門戸開放外交再考」と題して報告を行い、単著で発表した内容について国内のアメリカ史研究者と討議した。 こうした研究発表で得られた収穫として、 20世紀に超大国化するアメリカの一里塚と見なされていた門戸開放通牒を19世紀アメリカ政治の文脈で見ると、これまでと大きく異なる相貌が現れることについて、大方の理解は得られた。その一方、再建期の人種や階級をめぐる問題や南部民主党の位置づけについて議論が足りないとの指摘を受け、この点の資料収集と理論的考察をはじめた。 この研究の特色である、女性たちのサロンでの活動については、ヨーロッパで市民的公共圏と関連させて議論されているサロンとは性格が異なるとの指摘を受け、アメリカの首都ワシントンで形成されたサロンの発展について考察を開始した。 こうした中間発表から得られた研究の新しい手がかりのほかにも、 研究上の論点が浮上した。1930年代、中国国民党のアメリカへの働きかけが、門戸開放外交の考察ではこれまで大きく取り上げられてこなかったことを資料の考察の中で痛感し、このため台湾に赴いて、本格的調査のために必要な予備調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究成果に基づいて単著を公刊し、一定以上の評価を得た。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に公刊した単著『ヘンリ・アダムズとその時代』はアメリカ国内政治の発展の文脈で議論したものであるため、国際政治全体の中での門戸開放外交の考察が弱くなった。また、その国内政治についても、理論的分析を避けたため、印象主義的な記述になった。より世界的な視野で理論的な分析を行うことで最終成果をとりまとめることを次年度の課題とし、『門戸開放外交とアメリカ民主政』というタイトルで新しい単著の発表を目指すこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
収集した資料が膨大になったため、その分析に大きな時間がかかったこと、また中間成果として単著を発表したことから、海外で資料収集を行うための時間がとれなかった。このため、海外出張の旅費分が次年度に繰り越されることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度に行う予定であった海外出張により、資料収集と海外研究者との交流に努め、予算を使用する。
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