1551年のオスマン帝国によるシオン山の占拠という事件にもかかわらず、当該時期の十字軍の希望は、伝統的に十字軍に関与してきたフランス出身者と、宗教改革の過程で新たなカトリック世界の盟主となったスペイン出身者に限定され、16世紀末には彼らの中からも姿を消すこととなる。その背景には、ヨーロッパ内部の宗教的混乱や、オスマン帝国との外交関係があった。 その一方で、ヨーロッパ世界内部の和(=異端の粛正)とヨーロッパ世界の防衛、という「教会の十字軍」とも呼べる新しいタイプの十字軍観が、16世紀末に現れることとなった。
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