研究課題/領域番号 |
26370869
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研究機関 | 東京国際大学 |
研究代表者 |
青木 國彦 東京国際大学, 経済学部, 教授 (70004207)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 東独 / 東ドイツ / 出国運動 / ベルリンの壁 / 反体制 / 平和革命 / 教会 / ブレジネフ・ドクトリン |
研究実績の概要 |
旧東独国家保安省(略称シュタジ)文書保管庁(ベルリン)において前年度末に収集した関連資料(82文書、合計4585ページ)の複写および一部複写不備のあった資料の修正が、ようやく本年度初めに到着した。同庁では職員が個人情報の有無を点検、黒塗りした上で複写し、閲覧希望者に送付することになっている。まずこれら複写資料を精査し、あわせて前年度収集文献に追加して近刊および既刊の文献の収集をおこなった。 これら及び前年度作業に基づき、東独出国運動最終段階たる第3段階を画した「ローザ・ルクセンブルク・デモ事件」(東ベルリン、1988年1月17日)の経過と背景、結果に関する論文の執筆に取りかかった。第1段階を画したリーザ市民権イニシアチブ、第2段階を画したイェーナの白いサークルの沈黙円陣などの事件に比べて、この事件ははるかに複雑かつ大規模な展開となったことが明らかになった。元来出国派(DDR国籍法活動グループ)による単純な「挑発」行動企画であった事件が、当局の対応とその修正によって大規模かつ複雑な事件となり、より深刻な結果となった。当局の対応については、1980年代全体の総合的な背景研究が不可欠であることも明らかになった。そのため、書き加えるべき事柄が多くなり、この論文の完成を次年度に持ち越した。 また、背景研究の1つである「ソ連政治局によるブレジネフ・ドクトリン停止(1981年12月10日)のその後:東独をめぐる西独とソ連の綱引き」の学会発表を準備した。 あわせて関連既発表論文(上記の第1段階や第2段階に関連するもの及び諸議論批判)に大幅な加筆をおこなった。これらは、研究完成後の著書出版の準備である。 なお、以上の作業の中で、今後さらに収集すべき元秘密資料(旧東独国家保安省文書保管庁ならびにドイツ連邦公文書館などに所蔵)のリストアップが進み、次年度に収集予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度海外出張による収集資料の複写入荷が遅れて本年度になったこと、および、本年度には従来担当していなかった授業科目が加わり教育負担の時間が増えたことや本年度が定年退職年度に当り研究室整理等諸雑務のために想定以上に時間を要したことによる。 また、本年度も海外出張(ベルリン等旧東独地域)による資料収集を予定していたが、上記の事情ならびに出張先(とくに旧東独国家保安省文書保管庁)において長年私を担当してくれている職員との出張時期調整が困難であったことのため、海外出張を次年度に持ち越さざるを得なかったことによる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の遅れを取り戻し、研究の完成に向け、(1)資料収集の続行(旧東独国家保安省文書保管庁ならびに連邦公文書館などに所蔵されている元秘密資料について、収集すべきもののリストアップは前年度に相当程度に進んだ)、(2)学会発表(比較経済体制学会、ロシア東欧学会を予定)、(3)上記論文完成を予定している。(4)あわせて、本テーマに関する既発表論文に大幅な加筆を行う。 これらをもとに、また新たな補足論文も加えて、将来、著書とする計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旧東独秘密資料収集のためベルリン等への出張を予定していたが、次の理由により次年度に延期せざるを得なかったため:(1)前年度収集資料のうち、旧東独国家保安省文書保管庁所蔵資料の複写入荷が本年度になり(同庁の規定により自分で複写することはできず、個人情報を黒塗りした上で同庁職員が複写したものが後日送付される仕組みになっている)、その精査の上でないと、出張が不可能となった、(2)私についての先方の担当職員(すでに長年固定し、私の要望がよく理解されている)の日程と私の都合との調整が困難であった、(3)本年度後期に新たな授業科目も担当することになり、その授業期間中の長期出張が困難になった、(4)本年度が定年退職年度となり、諸手続きや研究室整理等のため年度後半にまとまった期間を取ることができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は時間的に自由度が高いので、本年度と次年度に予定の海外出張をあわせて実施する予定である。
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