研究課題/領域番号 |
26370873
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
加藤 玄 日本女子大学, 文学部, 准教授 (00431883)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エドワード1世 / ガスコーニュ / イングランド / フランス / 宮廷 |
研究実績の概要 |
本年度は3年目であるため、当初の計画に基づき、機器や文献の購入など研究環境の整備を図るとともに、以下の4点に集約される研究を行った。 第一に、先行研究の検討である。中世史研究におけるヨーロッパ・アイデンティティの論じ方について、国内外の研究動向を整理し、現在の グローバル・ヒストリー研究の展開との関係について、見通しを示した。この成果は、「ヨーロッパ・アイデンティティ」『現代歴史学の成果と課題:第4次』(績文堂出版)として近々刊行予定である。 第二に、王国という領域を越えて活動する貴族の一例として、サヴォワ出身ジャン・ド・グライーが13世紀の英仏独関係史において果たした役割について検討した。この成果の一部は、南フランス史に関する学術専門誌Annales du Midiに掲載された。さらに、同フランス語論文を発展させ、「ジャン・ド・グライの遍歴―一三世紀後半サヴォワ出身の中小貴族の活動」朝治啓三・渡辺節夫・加藤玄編『〈帝国〉で読み解く中世ヨーロッパ―英独仏関係史から考える』(ミネルヴァ書房)として近々刊行予定である。 第三に、エドワード一世の巡幸中における納戸部記録の作成の実態とその記録に現れる巡幸の実態を分析した。その成果は、「王の移動―エドワード一世の巡幸と納戸部記録」高橋慎一朗・千葉敏之編『移動者の中世―史料の機能、日本とヨーロッパ』(東京大学出版会)として近々刊行予定である。 第四に、オート・ガロンヌ県/ジロンド県/ドルドーニュ県文書館等で中世南フランスにおける領域研究に関する史料調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の主要な目的であった先行研究の検討・整理や中世後期・末期における王侯貴族の移動とアイデンティティの性格に関しては、順調に遂行することができ、成果の公表につながった。他方、中世初期における領域の性格については、史料や文献の収集を進めたものの、検討は部分的なものにとどまった。
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今後の研究の推進方策 |
さらに、以下の3段階を踏んで、本研究課題に関する総合的な知見を提示する。 (1)教会の領域(司教区、小教区)の性格の変遷、 (2)世俗の領域(王国、公領、城主支配圏)の性格の変遷、 (3)上記(1)と(2)をアキテーヌ公領の歴史の中に位置づけ、聖俗の領域の総合的性格を解明し、アキテーヌ公領の新たな像を提示する。
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