研究課題/領域番号 |
26370877
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
堀越 宏一 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (20255194)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 中世ヨーロッパ / 都市 / 家屋 / サンチャゴ巡礼 |
研究実績の概要 |
先行研究に基づく調査対象の確定、中世歴史建造物のデータ・ベースであるメリメを利用した中世家屋の残存状況の確認を行った後、8月28日から9月12日に、フランス南西部のミディ・ピレネー地方南部とラングドック地方において、中世都市家屋の残存状況の調査を行った。 訪問地の中では、今回初めて調査したミディ・ピレネー地方南部において、中世にまでさかのぼる石造民家が驚くほど少ないことを確認したことは、逆説的ながら一つの収穫だった。中世の石造家屋については、修道院や教会の影響下に建設されたことが推定されるが、司教座都市であると同時にサンチャゴ巡礼路も通っていたSaint-Bertrand-de-Commingesではその残存例がほとんどない一方、同様の背景を持つSaint-Lizierでは、わずかながら古いアーケードとともに、石造町家を確認することができた。同地方のこの他のサンチャゴ巡礼路沿いの都市でも、16世紀以降に建てられたアーチをもつ建物が多く、中世のゴシック式の店舗開口部やアーケードを持つ事例はほとんど確認されなかった。これを、中世都市家屋が多く残されているトゥールーズ以北の諸都市の状況と比較することは、中世町家残存の歴史的条件を考察する手がかりとなるだろう。 他方、Mirepoix では、中世に遡ると思われるハーフティンバー様式の建物とアーケードが残されていた。これは、石造建築が主体の南フランスの都市としては例外的な事例であり、その特殊歴史的な背景を追究することが重要である。また、北フランスに残るハーフティンバー様式の建物との比較の必要も大きい。 また、Fourcesでは、シルキュラード<circulade>と呼ばれる南仏特有の環状集落を見学した。加えて、Larressingle等では、囲壁に囲まれた教会起源の小型集落を見た。これにAuvillar等のバスティードを加えると、フランス南部に多い防備集落の多様な形態を網羅することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フランス南部地域における中世町家の残存状況について、ほぼ予定通りの調査を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度以降も、フランスの他地方における中世町家の残存状況について調査を進めて、その総合的分析を目指す。
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