研究実績の概要 |
「クリュニー型中世町家」のような石造アーチの1階開口部を持つ家は建物全体が石造であることが多いのに対して、それ以外の大部分の一般中世町家は、石造である1階の上辺は水平の木製梁によって支えられ、2階以上は木造のハーフ・ティンバー様式であるという研究仮説の検証を、これまで未調査だったフランシュ・コンテ地方とブルゴーニュ地方について行った。 そこでは、ルネサンス期の町家が多く残るPerouges、16~17世紀の町家群が観察できるVillefranche-sur-Saone、かつての巨大修道院の門前町 Clunyなどを訪れたが、そのなかで特に参考になったのは、フランシュ・コンテ地方のChateau-Chalon, Sougey (Montrevel), ブルゴーニュ地方中部のCharlieu, Marcigny, Saint-Gengoux-le-National, Chalon-sur-Saone, Couches, 北部のChateauneuf, Saint-Thibault, Vitteaux, Flavigny-sur-Ozerain, Noyers, Montrealなどの小都市に残る中世町家である。そこでは、Saint-Thibaultで12世紀の家を発見できたほか、各地で、石造町家と木造町家が混在して残存することを確認できた。 Noyersに多く残存していたハーフ・ティンバー様式の木造家屋については、15世紀頃のハーフ・ティンバー様式町家では、同時期の石造窓に見られる窓枠上辺の宝珠のような曲線装飾が模倣されていることに気づいた。14世紀以前にさかのぼる木造家屋の現存例はほとんどないと考えられているので、この「宝珠状曲線装飾」を手掛かりに、現存する最古の木造町家である15世紀のハーフ・ティンバー様式の町家群の所在を把握することが出来ると予想される。
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