ゴシック式アーチの開口部をもつ「クリュニー型」石造町家と水平梁の開口部のハーフィティンバー式木造町家という中世町家の二類型の地理的分布を調査し、前者が、フランス中南部のサンチャゴ巡礼路沿いの中世都市に普及した特殊な建築類型だったのに対して、後者がより普遍的な建築様式である、という仮説は、おおむね実証された。 ただし、現地調査では少なからぬ反例も発見した。トゥールーズ地方では、サンチャゴ巡礼路都市でも、石造町家の残存例がない都市が存在する一方、ブルゴーニュ地方では、サンチャゴ巡礼路に関係のない都市や村にも「クリュニー型」町家が存在している。このような原則と例外の間の説明が今後の課題である。
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