本研究は、ジェノサイドや強制移住など、大規模な人の殺害もしくは移動により生じた残置財産の処分と移転の事例を比較検証することで、これらに共通する「型」を浮き彫りにし、ここから20世紀に数多く見られた大量死や強制移住の本質に迫ることを目的とした。具体的には、ホロコーストにより生じたユダヤ人の相続人不在の財産の処分・移転と、ナチが二次大戦中に行った「民族ドイツ人」の実質的な強制移住により生じたドイツ系住民の財産のドイツ帝国への移転を比較した。この結果、国家が関与して財産を移す場合は対外債務の精算という形で処理されること、また損失の多い為替交換より、物資による支払いが好まれることが分かった。
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