本研究は、1930年代半ばから40年代初めにかけての日本とドイツの総力戦体制構築の過程で、労働・余暇問題への対処を主眼とした両国の社会政策がいかなる役割を果たしたのかを、比較歴史社会学的な観点から考察しようとしたものである。とくにナチス・ドイツの余暇組織「歓喜力行団」が戦時下日本の厚生運動に与えた影響に焦点をあてることで、労働科学やテイラー主義・フォード主義といった欧米の先進的な経営管理手法を受容しつつ、余暇の積極的活用を通じて労働生産性の向上をはかったナチスの社会政策が、どんな形で戦時下日本の社会改革構想に受け継がれ、総力戦体制=福祉国家体制の構築に寄与することになったのかを明らかにした。
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