研究課題/領域番号 |
26370890
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
田中 裕 茨城大学, 人文学部, 教授 (00451667)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 土器編年 / 土師器 / 茨城県 / 三ツ塚13号墳 / 測量調査 |
研究実績の概要 |
遺跡及び古墳の時期別集計により、古墳時代の地域社会の領域や階層構成等の実態を探る本研究の取り組みにおける最大の鍵は、古墳や遺跡の時期を見分ける「ものさし」、すなわち土器(土師器)編年軸の整備であるため、まずこの作業を行った。申請書の計画に従い、初年度からこの課題に取り組んでいるが、平成27年度には茨城県域における土器編年の作成と、コンセンサスの形成を図った。具体的には、茨城県考古学協会の土器編年プロジェクトに研究協力者とともに参画し、古墳時代前期の土器については、千葉県域の編年軸と整合性のある成果をまとめた。なおこの成果は、研究協力者らにより茨城県考古学協会のシンポジウムで公表された。 千葉県内及び茨城県内の古墳の集計作業を行った。その際、個別調査例の少ない茨城県内では集計方法に若干の修正を加え、古墳群の構成数とその立地の把握を行った。なお、成果の一部を用いた分析結果についてはアメリカ考古学会で発表した。 新資料の収集については、小美玉市妙見山古墳等の調査を予定したが、費用面を考慮して、同市羽黒古墳の測量調査に振り替えて実施するとともに、既報告分を含め、同古墳に関する資料収集を実施した。また、平成26年度調査のひたちなか市三ツ塚13号墳の古墳測量成果に関する早期公開の要望に応え、成果の一部を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に盛り込まれているとおり、本研究における集計には遺跡等の時期の識別が必要であり、土器の編年軸整備がその成否を左右する。平成27年度は、とりわけ編年軸が未整備である茨城県域において、千葉県域と整合性のある土器編年軸が、一部とはいえコンセンサスを得られるまでに整備できた点は大きな前進であり、平成26年度調査成果の公表等とともに、特筆される成果である。一方、新たな編年軸ができることで集計方法が変わることはもちろん、茨城県内の個別調査成果の質にあわせて、集計方針を微修正する必要が生じている。このため、全体計画の中で、集計作業や現地調査よりも、より広域で通用する信頼性の高い集計プラットフォームの整備を優先して実施している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、東関東全域をカバーできる集計のプラットフォームを完成する見込みであり、同時に集計作業を加速する予定である。このため、現地調査も計画書の中から優先度の高さと実現性を考慮して絞り込みながら実施するとともに、集計対象についても、地域毎の資料の質にあわせてメリハリをつけて実施する。集計の具体的な修正点としては、詳細な時期把握の必要な分析は質が保証されるごく限られたエリアに絞り込む。他のエリアについては、とりわけ古墳について、大まかな群単位と基数での把握を進め、その粗密を分析対象とすることで、停滞する群集墳論の新たな展開を促す。群集墳は「中間層」の把握の鍵とみられていることから、当初の研究目的である地域社会のおける階層構成等の実態把握に対してやや間接的にはなるが、確実に成果を収められる計画とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
古墳の測量調査について費用対効果の高い最適な実施時期は冬期から春期であることから、3月に調査(小美玉市羽黒古墳)を実施した結果、目論見通りの良好な成果が収められたものの、さらに追加の補足調査(羽黒2号墳の測量調査)をすることで、研究目的に資するよりよい成果が得られることが判明した。このため補足調査を模索したものの、費用とスケジュールの調整が困難であった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度当初に、次年度予算を若干足して、上記の補足調査(羽黒2号墳の測量調査)を行う。
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