本研究の目的は、国家形成期における階層構成の実態と、その基礎となる村落の基礎的・伝統的領域について東関東の資料から分析しようとするもので、とりわけ社会構成を復原する際の鍵となる古墳の詳細把握のため、平成28年度まで研究蓄積のある茨城県中央部における古墳調査に注力してきた。 平成26年度~平成28年度の間は、茨城県域研究者と協力して東関東古式土師器編年の整備を進めるとともに、茨城県小美玉市羽黒古墳群測量調査、同水戸市愛宕山古墳の踏査・整理作業並びにひたちなか市三ツ塚古墳群測量調査を進め、分析を進めた。平成29年度の当初計画では、平成28年度までの研究成果のうち古墳調査成果について報告書の作成を行うこととなっていたが、前年度において調査の許認可権者との関係から翌年度に積み残しをせざるを得なかった茨城県城里町徳化原古墳の墳丘測量・石室実測調査について、前年度からの繰越金を用いて年度当初に実施した。 調査後、当初の計画に基づき、徳化原古墳を含めてこれまでの調査成果について、茨城県中央部に位置する小美玉市羽黒古墳測量調査整理作業、水戸市愛宕山古墳測量調査整理作業、ひたちなか市三ツ塚第13号墳、同第整14号墳測量調査整理作業として、墳丘及び石室測量・実測図の製図、採集埴輪の図化・分析を進め、年度末に成果報告書としてまとめて刊行することができた。 調査報告書においては、茨城県中央部における前期・中期・後期・終末期の全時期で重要な資料の提示を行うとともに、古墳時代の間に起きた変化の大きさをより印象づけることができた。とくに本年度に実施した徳化原古墳の測量調査を通じて、のちの国郡里(郷)制下における里(郷)レベルの組織再編の実態について、まったく探る手掛かりがなかった里(郷)長の地域における位置づけを研究するための手掛かりを得ることができたことは、大きな成果であったと思料する。
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