研究課題/領域番号 |
26370894
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
有村 誠 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (90450212)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | コーカサス / 中石器時代 / 新石器時代 / アルメニア / グルジア / 黒曜石 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、コーカサスにおいて未だ明らかとなっていない中石器文化について考古学調査により明らかにすることである。コーカサスでは、紀元前5千年紀に登場する新石器文化がどのようなプロセスを経て出現したのか明らかでない。その原因は、新石器文化に先行する中石器文化の実態が解明されていないからである。本研究により、コーカサスの中石器文化から新石器文化へのプロセスを明らかにすることで、西アジア・コーカサスにおける農耕の起源や拡散に関する問題の解明に大きく寄与することになるだろう。 コーカサスの新石器文化集落の多くは、アララト盆地やクラ盆地といった沖積平野に立地し、地山の直上に集落が営まれた。つまりこれら低地の新石器文化に先行する文化は、同じ低地には存在しない可能性が高い。そこで本研究で注目した地域が、盆地を取り囲む丘陵地帯である。本年度は、アルメニア、グルジアの丘陵地帯で考古学踏査を開始した。グルジアのパラヴァニ湖周辺とアルメニアのアラガツオツン地域で完新世初頭遺跡の確認を行った。パラヴァニ湖周辺では旧石器時代の開地遺跡をいくつか発見したものの、完新世初頭遺跡は発見することができなかった。一方、アルメニアでは当該時期の複数の岩陰遺跡、開地遺跡を発見することができた。これらの遺跡では土器、黒曜石石器、動物骨などの遺物が採集された。これらの採集資料とアルメニア考古・民族学研究所に保管されている過去の調査資料と比較を行った。その結果、類似した遺物があるものの、採集遺物の中には、これまでに知られていない土器や黒曜石製石器の組み合わせがあることから、今回発見した遺跡には、未知の中石器文化の遺跡が含まれている可能性が高いことが判明した。 次年度の調査では、今回アルメニアで確認された遺跡において試掘調査を行い、文化内容の検討を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の調査により、アルメニアにおいて本研究が目的とする中石器文化に位置づけられる遺跡を複数発見することができたこと、また次年度以降の試掘調査の許可や実施体制において現地調査機関の支援が得られていることから、研究の達成度はおおむね順調であると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
アルメニアにおいては、アルメニア考古・民族学研究所と従来通りの協力関係を維持し、丘陵地帯における共同調査を継続する。グルジアにおいては、初年度に行った考古学踏査で完新世初頭の遺跡が発見できなかったことから、今後現地協力機関であるグルジア国立博物館と協議の上、新たな調査地域を探す予定である。
|