研究課題/領域番号 |
26370894
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
有村 誠 金沢大学, 新学術創成研究機構, 准教授 (90450212)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | アルメニア / コーカサス / 新石器 / 中石器 / 黒曜石 / 石器 |
研究実績の概要 |
本研究は、コーカサスにおける新石器文化の成立に関与していると推測される中石器文化の解明を目的として、アルメニア、アラガツ山南麓の丘陵地帯において考古学調査を行ってきた。2014年度までに当該地域で踏査を行った結果、中石器文化また新石器文化に帰属すると考えられる遺跡を数か所確認できた。その内、2015年度の調査では、レルナゴーグ(Lernagog)遺跡とノラヴァン(Noravan)遺跡において試掘調査を実施した。 レルナゴーグ遺跡は、マスタラ川の川沿いに位置する岩陰遺跡である。遺跡地表面において、黒曜石製石器、中でもカムロ・トゥールと呼ばれる石器が採取されたことから、紀元前6千年紀の新石器文化よりも古い時期の遺跡であることが推測された。試掘調査を実施したところ、現在までのところ厚さ約1mの文化層を確認することができ、黒曜石製石器、動物骨、炭化物などが発見された。黒曜石製石器には、カムロ・トゥール、押圧剥離石刃、細石器が含まれていた。炭化物2点の放射性炭素年代測定では、いずれも6900-6700 calBCの値が得られ、同遺跡がコーカサス新石器文化より古い時代の遺跡であることが裏付けられた。 ノラヴァン遺跡は、丘陵地帯とアララト盆地の境に位置する開地遺跡である。地表面には、円形、楕円形の礎石がいくつも見られ、また大型の石刃を主体とした黒曜石製石器が多数採取されたことから、新石器時代または銅石器時代の遺跡であることが推測された。試掘調査の結果、人工遺物を含む文化層は地表下20~30cmの比較的薄いものであることが判明した。出土遺物は、黒曜石製の規格的な石刃が主体であり、その他に数点の土器片が得られた。同遺跡の時期については、今後のさらなる調査と遺物の分析が必要であるが、土器型式から判断すると、原クラ・アラクス文化(前5千年紀末~前4千年紀前半)に帰属する可能性が高い。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究が目的とする中石器文化の解明は、レルナゴーグ遺跡の発見と、2015年度の同遺跡の試掘調査によって大きく前進したといえるので、本研究は順調に進展していると評価される。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、レルナゴーグ遺跡の発掘調査の規模を拡大し、より多くの考古学的データを入手することと、レルナゴーグ遺跡の同時代遺跡の考古学調査を進めることを計画している。その結果、コーカサスの中石器文化の位置づけを評価できるような考古学的データが蓄積できると考える。
|