近年、弥生時代の鍛冶遺構(鉄器加工場)の近くで、鉄とは別の素材(水晶、碧玉、サヌカイト、辰砂、青銅など)を原料とした手工業生産の痕跡がみられるようになってきた。そのような手工業の「複合化」に注目することとした。 手工業の素材となる原料が付近に賦存し、比較的入手しやすい地理的環境をもつ交易拠点集落では、鉄器生産を併行して行うようになる。日本海沿岸域など、海運によって遠隔地と結ばれた場合、希少原料の入手によって、鍛冶を中心とし、新たな複合型の手工業生産が展開された。弥生時代後期には、地域首長の管理のもと、鍛冶生産を中心とした手工業の複合化が引き起こされてくることが判明した。
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