研究課題/領域番号 |
26370903
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
内山 幸子 東海大学, 札幌教養教育センター, 准教授 (20548739)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 北海道 / サハリン / オホーツク文化期 / 擦文文化期 / アイヌ文化期 / 儀礼 |
研究実績の概要 |
擦文文化期とアイヌ文化期の儀礼に関する先行研究の整理を行った。考古学的な先行研究は少ないため、ほぼ収集し終えた。ただし、アイヌ文化期については、文献史料や絵画資料が多くあり、これらについては収集作業が未了である。 オホーツク文化期については、未分析であった松法川遺跡(羅臼町)の出土資料の分析作業にあたった(於:国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市))。焼失住居からの出土資料がほとんどであり、全量はまだ分析し終えていない。今回対象とした鳥類と中小型陸獣、アザラシ類、アシカ類では、頭部とともに四肢も確認されている。このことから、全身が住居内に持ち込まれ、家とともに焼けたことが明らかである。焼けたことによる収縮や歪みのため、種の特定に至らないものが少なくないが、基本的には遺跡周辺で捕れる動物が中心のようである。 また、研究開始前から分析作業を進めていたトーサムポロ遺跡(根室市)の報告書が、年度末に刊行された。同遺跡では、オホーツク文化期に骨角器とともに魚類も焼けた状態で多量に確認されており、焼かれる対象が魚類にまで及んでいた可能性があることは注目される。さらに、アイヌ文化期では鳥類の多くが焼けていた。焼く手間をわざわざかけていることから、単なる遺棄ではなく、儀礼的行為による可能性が考えられる。 オホーツク文化期の儀礼については、北海道考古学会の月例研究会(於:北海道大学)で口頭発表を行った。 サハリンでは、サハリン大学とサハリン郷土資料館(ともにユジノサハリンスク市)で、近年著しく進展した考古学調査の状況を確認する作業を行った。動物関係資料はそれほど増えていなかったが、ベラカーメンナヤチャシの出土資料の一部は焼けていたため、調査内容の精査と今後の分析作業が必要である。 住居の集成作業については、擦文文化期について取りかかったところで終了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
出土資料の分析作業に時間がかかり、分析量が当初の予定よりやや少なめである。 本研究では、主な分析対象が焼けて収縮したり歪んだりした資料であることや、資料を借用できない場合は比較標本が備わっていない出先機関で分析せざるを得ないことから、通常の資料分析よりも時間がかかることは予想していた。これらに加えて、実際に分析作業を行ったところ、ヒグマやエゾシカといった、これまで儀礼の主な対象とみられてきた大型動物だけでなく、魚類や鳥類などのサイズの小さな動物のなかにも焼けた資料が多く含まれることが明らかとなり、これが資料分析に予想以上の時間がかかっている要因である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の分析量は当初の予定よりやや少なめであったが、これは焼けて出土する動物の種類がこれまで儀礼の対象としてあまり認識されていなかった魚類や鳥類などにまで及んでいたためであり、本研究課題で新しい知見が得られた結果ともいえる。 分析作業は主だった遺跡から取りかかっているため、仮に分析対象遺跡が当初の予定より少なくなったとしても、丁寧に作業を進めていく必要があり、今後も対象とする動物種を限定せずに作業を継続していきたい。 また、住居の集成がオホーツク文化期を除いてほとんど進んでいないため、2017年度は特に住居の集成に力を入れ、取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
出先機関での資料の分析作業には最低でも数日間(できれば1週間以上)が必要であるが、資料の収蔵機関の都合と本務先での授業・学内業務との調整が最終的に折り合わず、予定していた旅費が、出張1回分執行できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度は前年度に1回分少なくなってしまった出張分を含めて出先機関での分析作業が行えるよう、年度初めより資料の収蔵機関との日程調整を進めていく予定である。 また、これに加えて、国内の機関とは資料の借用交渉も合わせて行い、現地にその都度行かなくても分析量が増加できるよう調整を進めている。資料の借用が可能となった場合には、運搬費の増額を計画している。
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