研究課題/領域番号 |
26370905
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
島田 和高 明治大学, 文学部, 兼任講師 (70398907)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 後期旧石器時代 / 黒曜石利用 / 中部・関東地方 / 細石器 / 編年 / 土地利用 / 黒曜石原産地 |
研究実績の概要 |
2014年度の研究計画は,中部・関東地方全域と後期旧石器時代全体を対象とした黒曜石利用の通時的な変動に関するデータの集成と解析である. 具体的なデータの集成は以下のとおり行った.1.後期旧石器時代を5時期に区分し,芹澤ほか(2011)と谷ほか(2013)のデータベースをもとに各時期の黒曜石製石器の産地推定分析結果を集成した.2.後期旧石器時代の主要な居住区を遺跡分布の濃淡と地理的要素にもとづき関東北部,関東東部,関東西部,愛鷹・箱根山山麓,野尻湖に区分し,各地域における産地別黒曜石利用頻度を集計した.3.上記データにもとづき,居住地における通時的な産地・地域別の黒曜石利用動向を復元した. これらのデータにもとづき,次の2つの課題について解析を行った. 1.最終氷期最盛期を含む寒冷気候に対する人類行動の変化を考察するために,古気候の影響を居住地よりも受けやすいと考えられる標高1400m前後の中部高地黒曜石原産地を対象として,古気候変動と後期旧石器集団による土地利用変化の相関を検討した.その結果,中部高地原産地土地利用の変遷には,気候要因により隠匿された見かけの遺跡分布や土地利用への規制が生じていることに加え,最終氷期最盛期における高標高地の景観変化に対する単純な進出・撤退だけではなく,文化的・社会的な適応による土地利用の変化も認められた. 2.先史人口動態の観点からは,稜柱系細石刃石器群の出現に伴う汎地域的な遺跡数の減少は,人口減少あるいは遊動戦略の変化など幾つかの可能性を示唆している.そこで,長野県矢出川遺跡A~D地点出土の細石刃石核および細石刃の属性頻度にもとづく形態分析を行い,愛鷹・箱根山麓,相模野台地,武蔵野台地,下総台地における細石刃石器群相互の比較によって細石刃石核消費と細石刃製作の基本性格ならびに矢出川遺跡A~D地点の形成過程について考察した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データベースを利用した黒曜石産地分析データの集成とその地理的な分布の解析については,2014年度の目標を達成することができた.黒曜石原産地の利用状況の変遷を把握できたことにより,計画はおおむね順調に進展したといってよい.黒曜石の消費地である各居住地における非黒曜石製石器に関するデータ集成がやや遅延しており,実資料調査を含め2015年度にまたがって実施する.非黒曜石石材の利用状況は,研究目的の一部である居住地における黒曜石の搬入頻度やサイクルを解明するための黒曜石利用状況との比較材料として必要である.この点を踏まえ,2015年度の研究計画に取り組みたい.
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今後の研究の推進方策 |
2015年度以降の研究計画に変更はない.2014年度に得られた,黒曜石原産地を最遠端ないしは焦点とする長距離遊動戦略の通時的変遷との相関を検討するために以下のデータを集成する.対象地域における遺跡数,回帰頻度,居住面積,石器密度,礫群頻度の変遷を人口動態の指標として集成・解析し,地域間で比較することを通して古気候変動と連動する人口動態の有無・程度を検討する.具体的には発掘報告書等の文献調査と各地域の実資料調査を実施し,データを集成する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度に計画していた韓国での国際学会に日程が合わず参加できなかったこと,また実資料調査の一部が2015年度にまたがってしまったため.
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次年度使用額の使用計画 |
当該次年度使用額は,調査出張旅費として使用する予定である.具体的には,静岡県,長野県内の実施料調査および本研究が対象としている黒曜石利用地域である中部・関東地方との比較のため,同じく先史時代の黒曜石利用地である北海道各地および九州各地の関連旧石器資料の実資料調査を行う.
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